「さぁ、着いたぜ。
ドームに行くならこの駅の始発を待てばいい。」
「五月、弥生。じゃあ、ここでお別れね。
ドームコンサート楽しんで来てね。」
私は弟の野球の試合の応援、友人の五月と弥生はアイドルのコンサートの為に寮を抜け出した。
目的が違うから、帰りにまた合流する打ち合わせをするつもりだけど…。
「ねぇ、弥生…。」
「うん、私も…。」
「どうしたの?貴女達あんなに楽しみにしてたじゃない?」
「私達…やっぱりコンサートに行くの止めるわ。
播磨屋のお兄さんに送ってもらってて、そのお兄さんの大切な女性の制止を振り切ってコンサートって気分じゃないのよね…。」
「おいおい、俺の事は気にするなよ。
それに後藤さんはまだ俺の気持ちを知らないんだぜ?
チケットも安くないんだろう?」
「…そうだけど…。大切な弟さんを応援したい、って真理亜の動機に比べたら、私達はちょっとミーハー過ぎたかな?
でも帰って謝るのもシャクだし、私も北条学園野球部の応援に行こうかな?
それに真理亜と一緒に行動した方が楽しいかな~?」
「わかった。
じゃあ、明日の早朝にここに迎えに来る。
朝の学院の配達に間に合わないないといけないからな…。」
「いいえ。迎えは必要ありません。
帰りは歩いて帰ります。」
「ちょっと真理亜それどういうことよ~?帰りは山道が登りになるんだよ?」
「貴女達も最初は自転車を乗り捨てて、帰りは歩きのつもりだったんでしょう。
私は…脱走の罰のつもりで歩くわ。
自己満足だけどね…。」
「じゃあ何でそこまでして寮を抜け出したのよ~?」
「それでも…弟に会いたいのよ…。」
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「これからどうする?
まだ朝早いし、北条学園も門は閉まってるよ。
カラオケで時間潰す?」
「それよりお腹空いた~。
今日ぐらいは、ファミレスで徹底的にジャンクフード食べた~い!!」
「賛成!」
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北条学園野球部部室
「やったぁ!背番号16ベンチ入りだぁ!
これも高坂くんのおかげだよ!」
「三好くん、僕は何もしてませんよ。全ては三好くんの努力の賜物…。
しかし、残念ですが三好くんの出番は無いでしょう。
僕が打って、走って、大勝しますから。」
「高坂くんは、一番ライトのスタメンだもんね~。」
「今日の僕は機嫌が悪い。徳川実業も可哀想に…。」
「どしたの?」
「妹が応援に来れないのです。
幼稚園の遠足と重なって」