その幼さの残る瞳は真っ直ぐに俺を見ていた。
強い決意を感じられながらも、口元は微かに笑みが残っていた。
「何故…?」
「先生が好きって事以上に理由があると思う?」
変わらずに決意を秘めた瞳で俺に告白した一樹くん。
仮にその言葉が何かの策略であれ、俺に与えた衝撃は相当なモノだった。
「いつから…?」
「それは僕の気持ち?それとも先生と母さんの秘密のどっちかなぁ?」
彼はあっさりと俺とあずさの秘密を打ち明けた。
「…電気街に行けば…盗聴機なんて簡単に購入出来るんだね♪まさかと思ったけど…事実を知った時は流石にショックだったよ。
『よくも僕だけの先生を』っ気持ちでね♪」
そっちのショックかよ!
実母の不倫より俺への恋愛感情かよ!
「…最初は…僕だってクラスや塾に好きな女の子は居たし、畠山先生の第一印象に何も抱かなかったよ。
でもね、親身になって指導してくれて、僕がテストでいい点取った時には自分の事の様に喜んでくれて。
『畠山先生みたいな大人になりたいなぁ』
って思い始めたら、途端に自分の部屋での二人きりの勉強が淫靡なモノに思えてきてね♪
自分の気持ちに気付いてから、先生と勉強する時間は『嬉し恥ずかし最高の一時』だったよ♪
なのに…。」
無邪気な笑顔から肩を震わせだした一樹くん。
俺への気持ちは本気なのだろう。
だが中学生の淡い想いを壊したのは実母と俺の背徳的行為なわけで…。
「父さんと不仲な母さんに今さら『理想』なんて求めてないさ。
仕掛けた機械が事実を告げた時は、自分の中に流れる血を全て捨てたくなったけどね。
悔しくて、悲しくて…自分の初恋がこんな結末になるなんて死にたくなったけど…。
お互いに気持ちいい声をあげる二人に興奮する僕自身に気付いた時は、腹立たしいけど母子そっくりなんだなって思ったよ。
『どうせ全員が壊れてる』ってね。
『懲らしめ』のつもりで先に母さんの携帯にメール送信したけど、平静を装いながら父さんの目を気にする母さんは滑稽過ぎたよ(笑)。
…それに…突然僕が塾を休んでも先生は来てくれなかったでしょう?母さんが無駄に心配するからで。」
確かにあずさへのメールが無かったら俺は駆け付けなかった。
「…今日はキスだけで許してあげる。
母さんには内緒だよ。
…嬉しいな…先生とのヒ・ミ・ツ!」
それは少年とは思えないほどの甘く、柔らかく、熱い口付けだった。
俺は抵抗出来なかった。。。