芸術的解決と倫理的解決との考察2 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

キルケゴールはアリストテレスの話も引用しました。

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ある男は許嫁の女性と結婚式を挙げる直前に、デルフォイの巫女からお告げを聞いた。
それは、

「結婚すれば不幸になる」

との内容であった。

花嫁は化粧をしてベールを被り、花婿が迎えに来るのを待ちわびている。
花婿が遂に来た。
花嫁は恥じらいながら目を伏せている。
しかし、花婿は花嫁の真横を通り過ぎ、扉の向こうに消えていった…。

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注意すべきことを列挙します。

古代ギリシャの巫女の予言は絶対で、神の言葉だったこと。

お告げを聞いたのは彼だけだったこと。

若い二人は事前に結ばれておらず、それだけ結婚が神聖だったことです。
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それらを踏まえて

1 彼は沈黙を守り(お告げの事を話さずに)結婚式を挙げるべきか?

2 彼は沈黙のまま結婚式を取り止めるか?(アリストテレスの物語は、この2の結末です。)

3 花婿は花嫁に語るべきか?

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1を選択することは、不幸を恐れない恋の形かもしれないが、彼は少女を侮辱したことになる、とキルケゴールは語ります。
彼女が知っていたなら結婚に同意しなかったであろうから。彼はその責任を彼女に負わせているのである。
また黙っていたことに対する彼女の怒りにも、彼は耐えなければならない。

2を選ぶことは、彼単独の破滅である。
芸術的解決はこれである。
詩的な破局との違いは、花婿は最後に愛の言葉を贈り、別れるかどうかの違いである。
しかし、それでもあとの祭りである。
芸術的解決は彼を死なせるか、また予言を取り消せるかである。
だが、どちらにせよ、彼が愛を貫いたとしても、何も知らぬ「彼女の愛の真実」を侮辱しているのである。

3は倫理的解決である。
しかし、それは天に逆らうことである。
家族間や戦争で引き割かれるより、過酷なことかもしれない。
倫理は現実と向き合う努力を提示する。
そして相互理解での別れか、天に逆らい愛を貫く悲劇的英雄の道もある。

しかし、これはあらゆる愛の詩人が弁護出来ぬ難題であるが、結婚に背く愛の形は「普遍性」もしくは「永遠の価値」を欠いた詩を提示することになるのである。
また、話した時点で彼は芸術的度量を持ち合わせた英雄でなくなる。
彼は彼女を(彼の尺度での)不幸にさせたと思うのだから。

現代(19世紀)は中間の段階を飛び越え、贋物を作る巧みさだけ示すなら、英雄があふれている。