「それでは、ここで事務所の後輩ルシファーちゃんに一曲歌って貰うですぅ~!」
あくまで外界の存在を人類に隠そうとする魔王アスモデウスの無茶ぶり。
当然ステージ上のルシファーは困惑する。
「ま、待ってアスモデウス。
言葉は『念話』で問題ないが、『唄』は駄目だ。
私はヘブライ語でしか唄えない。」
恥ずかしがるルシファーだが…。
「あの~、さっきまで隣に居たお連れのお姉さんの席が空いてるってことは…?」
余と隣の女性二人組が話しかける。
奈々子さんの空席を怪しまれたようだ。
「それについて疑うことは、みすみすこの後の楽屋への通行許可をフイにしてしまいますよ?
どうか私とだけの秘密ですよ♪」
「…は、はい。
言い付けを守らせてください…。」
と、人差し指を口元に当てる。
ええい、人間社会での余は嘘まみれで腹立たしい!
(ちょっと星明、何上手く言いくるめてんのよ!
無駄に人間としての順応してるし!)
(ウフフ、奈々子さんはよっぽどサタンがお好きなようですね。
私の分身である彼を想ってくれて嬉しいわ。)
(ミカエルさんを想うルシファーさんと同じです。
愛されてるから愛して、愛してるから愛されるだけだと思います。
さぁ、それよりも覚悟決めて歌ってください。
(わかりました…。)
「みんな~(堕)天使の唄声を聞いてくださいです!」
(天使の『唄』は天使最大の攻撃にして最大の祝福ですぅ。)
「そういうことでしたかアスモデウス。
召喚されかかった不安定なベヒーモスが『悪意』に誘発されるかもしれませんものね。
アビスに堕ちた私の唄声ですが、『天』からの賛美を伝導したいです。」
****
舞い降りた12枚の翼を持つルシファーの唄は、『神は人間を賛美している』との意思を古代ヘブライ語で伝導することで、元天使長と、最古の悪魔の共演によりASMOのカウントダウンドーム公演は幕を降ろした。
しかし、ドームの外には勿論、ミカエル殿が待っていて、もう一つの決着がそこにあった。
続