「ラ…ラファエル姉さん…か…?」
「そうです。ルシファー、人間の男性となっても貴女は変わらないですね。直ぐにわかったです。」
「な、何で、こんな三つ編み眼鏡の女性を選んだのだ?」
「この肉体は芸術的素養と、哲学的見地に優れた素体だから重宝してるです!
そうやって見た目で判断するから未だに…。
まあいいです。積もる話は後にして、三人とも来るです。
久美子さん、歩けるですか?」
「はっ、はい。大丈夫ですけど…。」
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病院内廊下
「落ち着いてるじゃない、奈々子?
こんなとんでもファンタジーを聞かされてパニックになるかと思ったわ。」
「そりゃ、私だって驚いてるわよ。
でもね、何か安心したっていうか、凄く納得したんだ♪
佐田くんが来てから、時々起こる不思議現象が、夢でも錯覚でもないんだなって…。
久美子が悪魔を召喚出来たなら、私の前に本物の悪魔が現れても夢じゃないんだなって。」
ホントにそうだと思う。
佐田くんが普通の人間じゃないと知って、何だか安心した。
この年になって、親やテレビや学校が教えてくれた常識が通用しない、未知の世界が存在することが私は嬉しかった。
大学で文学部を出て、一度は雑誌社に就職したのも、世の中の不思議を体現したかったから。退職してから、アジアン雑貨に勤めたのも、神秘的な雰囲気が好きで…。
「ここです。」
里見愛と名乗る天使のラファエルさんは、私達を一つの部屋に案内した。
ラファエルって、やっぱりあの超有名なラファエルさん?
だったら私、人類史に残る栄誉な…。
「論より証拠です。この光景を見るです。」
ドアが開かれると、六人の警察官が酷い傷を負って、それぞれのベットで治療を受けていた。
その中でも唯一の女性の傷が特に酷い。
佐田くんもそれに気付いて…。
「ウリエル姉さ~ん!」
彼女がベットに近づくと、痩せ身で切れ長の目の男性が佐田くんを制止した。
「サタン様、大丈夫です。貴方が遣わせたソロモンNo.14レラジェの治療は成功しました。
あとは時間に任せるしかありません。」
「よくぞ彼を運んでくれた!バティン、度々すまない…。」
「…これはつまり…。」
「治療してるのもされてるのも天使と、使徒になることを選んだ人間です。
妹ウリエル達はロストファイブを追ってましたが、ウォサゴの自爆に巻き込まれたです。
しかもウォサゴは本体を殺さない限り復活するです。」