「興味本意だったのよ!
ネットには胡散臭い『霊媒士』や『預言者』のサイトなんて山ほどあるし、『珊瑚』さんは奈々子のファンの中では『良識派』だったから安心してたのよ!
『誰にでも出来る簡単な悪魔の召喚』なんて、お料理のレシピのサイトみたいだっし、ホントに成功した時は嬉しかったわ!
…そこで私は『夢見のガミジン』を選んでしまったの。『意中の人に、意中の人の姿を見せる悪魔』!
いい気分だったわ…。
奈々子の姿に変身して、勝手に『裏ファンサイト』を立ち上げてさ♪
自分撮りした画像をアップして、私の身も心も『なりすまし』を続けたわ。
でも…奈々子のファンを横取りしても虚しいだけだったわ!
…だって私がホントに欲しかったのは佐田くんだったんだもん!
日に日に『私』がガミジンに侵食されていき、ハーケンクロイツの印はどんどん大きくなっていったわ。
ガミジンの『精神』は吐き気がするほどの屑男だったけど、たった一つだけ感謝してるわ。
だって…今までの私なら、チャンスがあっても佐田くんを(ゴニョゴニョ)…に誘えなかったわ!あいつが勢いをくれなきかったら…。」
久美子殿は泣いていた。
軽はずみな行動が知らぬ間に大きくなっていたことを。
パソコン画面のみの繋がりが、彼女の現実感を喪失させたのだろうか?
改めてインターネットの虚構性は、余のような悪魔の存在の方が現代人にとって現実感があるのではないのだろうか?
「佐田くんごめんなさい、まさか『珊瑚』さんのサイトの閲覧者で死者が出てたなんて…。
しかも警察が捜査にまで…。
ホントにごめんなさい!
でも、リアルの奈々子に全く恨みはないし、奈々子に真剣な佐田くんを好きになったのはどうしようもないの!」
「良かった!
ネットでチヤホヤされるより、リアルイケメン追っかける方が久美子らしいわ♪やり方には問題あったかもしれないけど…。」
「…と、言うわけです、奈々子さん。
どうか久美子さんのことをお許し…。」
「ウソ…?奈々子聞いてたの?佐田くん酷いよ!」
「…申し訳ありません。こうでもしないと貴女の真意が…。」
「久美子、私怖かったの。中傷コメントしてるのが久美子だと薄々感ずいてたのに…。
許すことなんて最初からないわ。
私達親友じゃない!」
「奈々子…。」
「コンコン!」
「失礼するです。この件を担当してる看護師にて、佐田星明の姉の里見愛です。協力をお願いするです!」