12月29日 昼過ぎ
聖ヨハネ病院内
「コンコン!」
「失礼します。ご気分はいかがですか?久美子さん?」
「さ、佐田くん!
そんな…、知らない病院で三日も眠ってたってだけでも驚きなのに、目が醒めて直ぐに佐田くんに会えるなんて!」
「元気そうですね、安心しましたよ。」
何で?何でそんなに優しく笑えるの?
あんなことした私は嫌われたんじゃなかったの?
もう二度と会えないかと思ってたのに…。
病床の布団を跳ね上げ、勢いに任せて思いっきり抱きつく。
この衝動は止まらないわ。
佐田くんの天使の微笑みは悪魔だわ…。
「…夢。怖い夢を見たわ…。暗闇で手足を鎖で繋がれて、人とは思えない怪物が私に近づいて…。
でも、佐田くんは私を守ってくれたわ!」
私が彼の首に手を廻しても、彼は抱き締め返してくれなかった。
俯きながら、心苦しそうに絞り出す言葉は…。
「私は、久美子さんが思うほど、立派な『人間』ではありませんよ。
但し、貴女方を四六時中守れるかどうかは、貴女方が真実を話し、貴女達も真実を知る必要があります…。」
「貴女『達』ってどういうこと?」
「その答えは久美子さんが一番知ってると思います。」
「何で!
病院まで来てくれたのに!
何で佐田くんから奈々子は消えないの!?」
惨めだわ…。みっともない…。こんなカッコ悪い私なんて大嫌い!
「私は今日、『エターナル・ビューティー』さんとして話が聞きたくて、ここに来ました。」
血の気が引くって、ホントにこんな感じなのね。
一番知られたくない人に、一番知られたくないことを問われたらこうなるのかな?
「…奈々子にそう聞けって、言われたんだ?」
「…いいえ、奈々子さんはまだそのことは知りません。
ただ、二人には私から伝えなければならないことがありますし、聞かなければならないことがあります。
その為に、奈々子さんは一階ロビーに待たせてあります。
私が聞きたいのは『悪魔のサイト』と『珊瑚』というHNですが…。」
ウソ…?ロビーで奈々子を待たせてるって何?
二人で来たってこと?
私が知らない間に宜しくやってて、私は『浦島太郎』ってわけ?
「非道いよ、佐田くん!何で奈々子なの?私は真け…。」
「この件で既に二人亡くなって、サイトを閲覧した10人が入院してる!!
少しは危機感を持ってください!」
年下とは思えない彼の迫力に押され、私は『悪魔』とのいきさつを語った。