20世紀。
それは最も効率的に、最も沢山の人間が死んだ時代。
日本の敗北は欧米の植民地支配を終わらせたが、ドイツ、いや国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)の敗北は、欧米に蔓延する悪魔崇拝を終わらせた。

悪魔の力を戦争に、と目論んで、多数の権力者が競うように悪魔を召喚した。
しかし、有力者ほど「対価」を惜しむか、自らが払い切れないほどの殺戮を望むが故に、「悪魔を戦争に用いるのは効率的でない、兵器の開発に尽力した方がマシだ。」との結論に至ったのである。
そこに目を付けたのがソロモンNo.2「嘘と言語学の悪魔」アガレスである。
ドイツには長年後進国とのコンプレックスがあった。
寒い冬と敗戦によるインフレ、そして何よりも英仏中心の文化はドイツに取って大きな隔たりだった。
アガレスはそこに突け込んだ。
巧みな嘘はお手のもの。
そして世界中の言語を操るその様に、閣下はひどく心酔した。
それが罠だった。
アガレスは自分が使われる側でなく、自らが人間の主人となり、兵隊達を操り人形の様に戦火に投じた。
アガレスなりのアルマゲドンを起こしたつもりだったのだろう。
彼は過去にもバベルの塔を破壊し、人間達の意志疎通を阻んだという「前科」があったからだ。
最も人間を愛する天使、守護課のラファエルは積極的な天使軍の干渉を直訴したが、天上界の裁決は「人間が求めた結末だから」だった。
結局アークエンジェルズは魔界のサタンにアガレス討伐の協力を要請し、伝導課ミカエルの剣により、アガレスは天上界の牢獄に無裁判で終身刑となった。
***
「久しいな、ガミジン。
コソドロ悪魔のウォレフォル如きが反転契約に踏み切る器でないと思ってたが、まさかお前が黒幕だったとはな?
人間化した余を狙うのは千載一遇のチャンスだったのになぁ、うん?」
レビアたんの活躍により、久美子殿に憑依したガミジンを切り離すことに成功した。
久美子殿は意識を失い、ベッドで眠っている。
ガミジンはレビアたんの水縄に縛られ動けない。
「けっ、俺なんかが首謀者と思い込むたぁダンナもヤキが回ったかい?
この女は落合奈々子の人気ぶりが妬ましかったから簡単だったぜ。
悪魔にはいい時代になったもんだなぁ、ダンナ?…グフッ!」
奴は魂喰らい(デスイーター)により自害した。
「奈々子殿が人気者?」