「マイク赤羽根」と名乗る通り、彫りが深く、まつ毛が長く、顎のラインががっしりと剛直な印象を与える。
余は今こそ確信した。
世界の法則を司る「神」は決して天上界のヤハウェではないことを。
思慮の浅いヤハウェがこんな巡り合わせを用意出来るわけがない!
ミカエル殿よ、余が余の中に棲むルシファーを切り離す為に画策してるのは、ミカエル殿の為でもあるのだぞ?
それを貴殿が転生前の「依り代」である奈々子殿と面識を持ってしまっては…。
「ラビット運送様、クリスマスの繁忙期はなるべく午前中に来てくれませんと…。
ちょっといいですか?」
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伝票にサインして、本当はこの胸のドキドキを、赤羽根さんに全部喋ってしまいたいけど、初対面でクリスマスを過ぎた独り者(25歳を過ぎた独身女性)が自分のメルヘン体験を話すなんて痛すぎる女だわ。
ウチのエリアを担当してくれるなら、いつでも来てくれるわけだし…。
帰ろうとしたドライバーの赤羽根さんを呼び止めた佐田くん。
繁忙期って、アジアン雑貨のウチは別にクリスマスだからって忙しくないよ?
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「ミカエル殿、何でここに来た!?
『トラックで来ました』って回答は無しの方向で。」
「……。」
「悩むな!言うつもりやったんかい!?」
「いえ、冗談はさておき、この店御用達のドライバーなら、貴方と情報交換しながら落合奈々子さんを護ることが出来るかと。」
…自覚はあったのか?
確かに厚かましく店の関係者として入り込むよりも、外部の宅配ドライバーの方が自由が利くか…。
「で、情報交換とは?」
「警視庁音楽隊として潜入させたウルエルから今朝連絡が入りました。
例のひったくり犯二人が遺体で発見されました。」
「…そうか。印は?」
「勿論、二人とも

ハーケンクロイツの印は身体に残ったままです。」
「悪魔に操られた人間なんぞ哀れなものよ…。英雄気取りか目先の力に騙されおって…。」
「天上界は守護課ラファエルの命により、対魔課の帝釈天を派遣したことを報告します。」
「今は魔界の雑務はベルゼバブに任せてある。好きにしろ…。
令状は誰のだ?」
「ホシは『盗賊の悪魔』ウォレフォルです。」
「馬鹿な!ロストファイブは68年前に瓦解したぞ!」