「アジアン雑貨ティンブー。」
木彫りの仏像から民族衣装、アンティークな小物から中華食材まで幅広く取り扱ってますが、一部常連客(と言っても店長の個人的な知り合い)と近所のお腹空かせた学生が安い唐揚げと肉まんを買いにくるくらいの静かなお店のはずが…。
「ありがとうございました。
またお越しくださいませ。」
今日入ったイケメンアルバイトの佐田星明くんが変化をもたらしたかも。
「よう、奈々子ちゃん!
今日はいつになく賑やかじゃないか?」
「刈藻さん、そうなの。新人バイトの佐田くんが集客してくれて…。」
ウチが担当エリアのラビット運送の刈藻(かるも)さん。
悪い人じゃないんだけど…。
「へぇ~、そいつは俺ものんびりしてられないなぁ~?」
「や、やめてください、刈藻さん。年下の男の子なんか興味ないですから…。」
「じゃあ、俺みたいな年上がいいの?
だったら今度の休みにさ…。」
この強引な誘いが苦手です。
しかも言葉の所々に私が淋しい女ってのを見下した口調が…。
「納入された商品の検品は終わり、伝票に店の判子と余…いや、私のサインをしました。
以上で宜しいでしょうか?」
タイミング良く佐田くんが会話に入ってきてくれた!
ありがとう~。
「う、うん。これでいいわ、佐田くん。
刈藻さんも佐田くんの面倒見てあげてね。」
と、私は取りあえず当たり障りない言葉で刈藻さんに返ってもらおうとしたら、佐田くんが彼に…。
「…私はまだ研修中です…。
何でも私に教えてくださいませ。
…たとえ落合さんとのどんな会話でも…!」
と、今まで穏やかな接客をしてた佐田くんが鋭く睨み付けた!
目が光るって、比喩じゃなくて一瞬本当に紅く光ったような…錯覚だよね…。
「あぁ、『落合さん』また…。」
慌ててトラックに乗り込む彼。
予想通りの小心者過ぎてがっかりもしないわ…。
**
17:00
バイト学生の鶴野愛美ちゃんが出勤して早番の私と佐田くんは勤務終了です。
「佐田くん、奈々ちゃん、お疲れ様。
気をつけて帰ってね。」
店長に見送られ店を後にする私達。
いくらバイト初日とはいえ、少し疲労が見える彼に私は…。
「ねぇ、この後予定ある?」
「いえ…。」
「じゃあさ、私といい汗かかない?」
「…それはまさか…?」
彼の怪訝そうな表情に気付き…。
「違う違う!スポーツジムよ!紹介制度があるの。君、不健康そうだしさ。」