「茉奈ちゃ~ん!紳士的彼氏が待ってたわよ~。早く行ってあげたら~?」
用具庫を施錠して戻ってきた中島主将は、女子ロッカールームの前で野球部の彼とすれ違ったらしい。
「え~、鈴木くんたら、いいって言ったのに!
すみません、それじゃお先に失礼します。」
いいなぁ、こんな時にこそ、頼りになる彼氏が居てくれたら…。
何人に告白されても、どれだけライヴを観に来てくれても、私はたった一人の男子の心を…。
「里見ちゃんも、絵描き少年が待ってたよ~!」
「に、西九条くん?
わ、私達はべ、別に待ったり、待たせたりする関係ではないです!
そもそも、普段無愛想な彼が何故こういう時にだけ…。
全く、彼の貧弱な身体能力では足手まといになるという自覚が…。」
テンパると無駄に饒舌になるのは愛ちゃんのクセね(笑)。
ホントは嬉しがってるのに…。
「愛ちゃん、早く行ったら?
嫌なら一人で帰れば?」
全く!ここまで言わないと駄目な二人なんだから…。
「わかったです、真樹ちゃん。失礼するです。」
「ふん、今回は部活外恋愛者の勝利だな…。
ここで私達が待ってれば逆に士郎達が帰れんな…。
仕方ない、書道部の京子を訪ねて帰るとするか。」
男子部員と付き合ってる先輩方と柳生ちゃんは京子先輩と団体で彼氏の自慢話をしながら下校し、島先輩は、
「理恵、あんたの三好先生から盗んだって技に期待してるわよ。
結城ちゃんも行く。」
「はい、私も犯人が島さんの彼氏でないこ…痛い!痛い!じゃ、みなさんさよなら~。」
山名先輩と帰って行きました。
残りもの?の私は伊達さん達と大谷さんと帰ることにしました。
南部先輩や男子部員の人達も居るから大丈夫…よね?
辺りはすっかり暗く、外灯と外灯の距離が少しある道筋で私はその言葉に反応してしまった。
「『グリーンライフ』のヴォーカル、レヴィンたんだよね?
やっぱりこの学校の学生だったんだ!」
ウソ?変質者って、私のバンドのファン?
まさか私が目的?
確かにこの小肥りで長髪な人、何度かライヴの前列に…。
「な、何のことですか?
人違いは困ります。」
「顔はメイクで誤魔化せても、その声を僕は忘れないよ。
ハイ、すっぴんと制服姿ゲット~。」
「や、やめて下さい!
勝手に写真は。」
「さやか、まどか、ウチ三好先生を…。」
「その必要はないよ大谷さん。」
柿崎くんに赤松くん、芹沢くん。
良かった!