同時刻 美術室
「真樹タンだぁ~。可愛い…。」
「ホントに来てくれたんだぁ。」
「西九条、お前が交渉してくれたんだって?
ありがとうー!」
美術部にはモデルを承諾した軽音部の真樹ちゃんを一目見ようと関係無い生徒で溢れていたです。
「いえ、部長。礼は漫研の里見さんに…。
てか、今日に限って美術部員全員揃ってるし!
現金な奴らだな~。ほとんど幽霊化してるクセにこんな時だけ!
それに部外者は出てってくれ!」
「で、では真樹ちゃん。私も部外者ですのでこれで失礼するです。」
わ、私の役は終わったです。
この後二人がどうなろうが、私には関係無いです。
「待ってよ!愛ちゃんも居てよ!
知らない人ばかりで緊張するし。」
「モデルの表情が強張ったら台無しだな。
里見さんも残ってくれ。」
全く西九条くんは私の予定や立場など気にせず強引です。
絵のことしか頭に無いようです。
「私、愛ちゃんの漫画好きよ。
だから愛ちゃんにも可愛いく描いてほしいな。」
「俺も里見さんの絵には刺激を受ける…。
やっと静かになったな…。
始めるか。
好きに座ってくれ。
楽にして自然体で。
変にポーズとか着けなくていいから。」
と言いながら既に右手が動いてるです。
口は悪くてぶっきらぼうな態度ですが、絵に対する真剣さは素敵です。
さて、真樹ちゃんにもリクエストされたなら私も私の絵を書くです。
長い髪、スレンダーなボディ。
少し男性的な鋭い眼光が男女関係なく惹き付けてるです。
西九条くんがモデルに指名するのも当然です。
「…あぁ、『動かないぞ』って思い過ぎだよ。
もっと自然に…。」
「ごめんごめん。
モデルって動いちゃ駄目ってイメージで…。」
「うん。でも話す時はあまり動かないでね。」
「厳しいなぁ。」
な、なんかいい雰囲気です…。
やはり西九条くんはこれをただの口実として真樹ちゃんに…。
いえ、噂によれば西九条くんは完成した絵や人形素体にしか興味を示さない典型的な「ピグマリオンコンプレックス」だと聞いたです。
って私は何故、その噂をチェックしてるですか?
あり得ませんです、私は確かに芸術的紳士を求める傾向はあるですが、西九条くんは芸術家でも、粗野な態度は紳士では無いです!
「ねぇ、愛ちゃん。私ってそんなに頭抱えるほど描きにくいの(笑)?」
「違うです!これは…。や、やっぱり失礼するです!」
…こんなの耐えられないです…。