「次!オフェンス5vsディフェンス5」
颯爽と指示を出す瑞穂は三年生になり指導者らしくなりました。
片倉くんというパートナーの存在も勿論大きいですが、一から自分で創った部ってのが、今まで勝利の為にだけサッカーをやってきた彼女を変えたのかもしれません。
まぁ、これだけ個性的なメンバーと半年も過ごせば、誰でも変わるでしょうけど。
「…里見も宇都宮も休みか…。
なるべく同時に休むなと言ってあるのに…。
仕方ない、大谷、右サイドバックに入れ!
出来るな?」
「はい、ポジションにはこだわりません。
出番もらえるならどこでもやりますぅ。」
プレーも性格も柔軟な大谷さんは本当に頼もしい一年生です。
「…里見と宇都宮が危機感を持ってくれたらいいのだが…。
左サイドバックは伊達!
やってみろ!」
瑞穂の指示を聞いた男子から「おぉ~!」って声と、「えぇ~?」って声が混じってます。
男子はまだまだ部員も多く、二年生、一年生にも控えが多いので、女子が足りないなら男子から借りるかと思ったら、瑞穂はあくまで女子部員でやりくりしました。
しかも女子の一年生はまだ四人控えてるのに伊達ちゃんの指名とは…。
「何だよ、結局俺ら男子の中でチャンス掴むしかないのかよ。」
「でも何で伊達ちゃん何だよ。
マネージャー(ホントは書道部)の内藤先輩の方がまだ上手いって噂だぜ?」
伊達ちゃんが一年生の男女から『伊達荷物』って言われてるのを知ってます。
瑞穂も中島さんも静観してるみたいだけど…。
「結城!キーパーとして的確にコーチングして、最上と南部に伊達のフォローをさせてみろ!」
「は、はい!」
なるほど、瑞穂は敢えて「足手まとい」の伊達ちゃんを投入して守備力強化を図るみたいね。
強引な指導は相変わらずだわ!
きっと伊達ちゃんが入部してなかったたら迷いなく私を入れたんでしょうけど。
「島、柳生、茉奈!手加減するなよ!」
「よ~しやるわよ島ちゃん、柳生ちゃん!あたし達スリートップの破壊力を新入部員に見せてやりましょう!」
「理恵、彩、翔子ちゃん、美空ちゃん、さやかちゃん。
これは練習だから、きっと瑞穂は後方にいて攻めてこないはずですわ。
そこがチャンスですわ!
5vs5と言いながら、キーパーも居るから6人だし、瑞穂が後方に居るなら6vs4ですわ。
さやかちゃん。焦らず、今までの練習を思い出して。」
「思い出すと目眩がします…。」