試合は後半になってから膠着状態だ。
ベルリン大学の学生達の動きも前半よりも良くなっている。
こっちは片倉を入れて2トップになった為にサイド攻撃だけでなく、中央突破も増えた。
前線の武田と片倉が、フィールド中央を早いパス回しで鈍重なセンターバックのロロちゃんを翻弄する。
しかし、大学側のディフェンダーもキーパーも、そしてトップ下のイザベラちゃんも守備に回る機会が多くなり、追加点が取れない。
後半18分
右の相良のセンタリングに武田が頭で合わす。
「駄目だ、武田くん。空中戦はそのケニア女姓にまとも太刀打ち出来ないよ。」
180センチの武田を吹っ飛ばすかのようなヘディングで相良のセンタリングをクリアしたロロちゃん。
ボールは大学側に渡り、イザベラちゃん⇒フレイアちゃんに渡った。
南部ちゃんとは敢えて勝負せず、一度バックパスし、イザベラちゃんがドリブルで切れ込む。
その動きに釣られた南部ちゃんが一瞬フレイアちゃんから目を離した。
「しまった…!」
「お前とまともに勝負するほど私達バカじゃないね。
お前はイザベラと二人がかりで挑む価値のあるディフェンダーね♪」
「伊東さん、榎田さん。彼女は打ってきます!」
「もう、遅いね。『雷槍(グングニル)』」
トップスピードを維持したまま力強く正確なシュートを遠くから打ってくるフレイアちゃんのミドルシュート『グングニル』はキーパー泣かせだ。
飛び出しのタイミングが難しく、遅れると間に合わず、早すぎるとシュートを止めてドリブルで抜かれてしまう。
榎田の飛び出しは悪くなかったが…。
「バシッ!」
それよりも早く左サイドバックの百地が身体を投げ出してブロックした!
「やったー!百地先輩ナイスブロック!」
こぼれ球を伊東がタイミング良くクリアしたが…。
「…痛い!無理に飛び込んだから、ふくらはぎの筋肉が悲鳴を…肉離れかも…。」
値千金のシュートブロックだったが代償がデカ過ぎだ!
百地を怪我で交代させるとなると…
島津に左サイドバックをさせるか?
由紀姉をセンターに入れて伊東を左に回すか?
里見ちゃんは身長も経験も無さ過ぎる…。
となると…またしてもぶっつけ本番だが
「選手交代。
負傷の百地に代わって左サイドバックに柳生ちゃん。」
「わ、私ですか?サイドバックはやったことないですよ?」
「…柳生か…。真田め、相変わらず粋な采配を…。」
「恵里菜が?」