「どうして、左右を変えるだけで一気にチャンスが…?」
鮮やかなカウンターが決まったことに驚きを隠せない私は真田先輩に尋ねた。
「利き足の違いだよ。」
「利き足?」
「通常、選手はドリブルすると利き足の方に身体とボールが流れる傾向がある。
だから相良みたいな左利きの左サイドの選手はライン際に強く、縦に突破力がある。
でも、走力もボディバランスもない小菅は、単独で右サイドを突破する力がない。
だから右利きの小菅を左サイドに配置することを提案したんだ。」
「するとどうなるんですか?」
「見ての通りさ。
左サイドだと身体の軸が中央に向くから、右やトップ下よりもパスのスペースがワイドに展開される。
ジダン、リベリー、中田英寿。右利きで左サイドを好んだ選手の理由はそれさ。」
「じゃあ、なんでもっと早く?」
「相良が右サイドに適応しないと意味ないからな。
この1ヶ月、あいつには徹底的に不得意な右足を鍛えさせた。」
「そんな…優矢くんたら私の知らないところで…。」
小菅くんからのパスを受け、いつもと逆の右サイドを駆け上がる優矢くん。
センターバックのロロさんが前線に上がってる今がチャンスだわ。
「右サイドなんて小学校以来だけど、センタリングでも、スルーパスでも選択肢があるのは最高だな。
いくらあの巨人姉ちゃんが居なくても、高さ勝負は不利だ。
武田主将!」
優矢くんからの低くて早いラストパス!
武田主将が追いついて華麗なシュートのはずが…。
「何で出遅れてるんですか!
チャンスなのに。」
もう一人のセンターバックと同時にボールに追いつき、もつれ合いになりシュートまでいけないけど…。
「ピッ!」
やった!足をがかかってエリア内で倒されたからPKだわ。
「良くやったぜ!武田ー!」
「いいぞー!」
最大のチャンスだわ。
でも誰がPKを蹴るのかな?
やっぱり武田主将?
小菅くん?優矢くんは無いかな?
「ようし、ここはチャンスだ。
高坂ちゃん、頼んだぜ!」
「私か?武田、お前が貰ったチャンスにいいのか…?」
「あぁ、しっかりリベンジしてやんな!
これが決まったら、高坂ちゃんも楽に攻撃参加出来るだろ?」
(武田の奴、わざと敵に追い付かせてPK を…。
しかも、私がフレイアの為に攻撃参加出来ないのではなく、私の恐怖心を見抜いてたのか…?
お前がキャプテンなのも、中島が惚れるのも納得だ…。)