テッペキ!ダイアリー 1 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

結城翔子の決断


「…うん、じゃあね。」

「あの…本当にごめん。」

「今更止めてよ、謝られたら…惨めだわ。」


やはり違う高校の彼氏との恋愛は想像以上に辛く、私は不安と疑念を抱えながらの毎日を過ごしていた。

部活に打ち込むことで疑わないようにしていたが、それは「彼」を「私の中の彼」と同一視しようとしていただけだったかもしれない。

「…確か…マネージャーだったっけ?
クラスメートかな?」

「…両方正解だよ。」

「ずっと一緒なんだね。
羨ましいな…。
良かったね。」

『羨ましい』は「彼に」ではない。私が私に抱く恋愛イメージへの羨ましさだ…。
もう別に…彼にもその女の子にも怒りが沸いてこない…。

「今日だけじゃないんでしょう、どうせ…?」

「あ、あぁ。」

もう、私に嘘もつかないし、カッコもつけない。
今日、私は『現場』を押さえたが、お互いに虚勢を張るでもなく、逆ギレするでもなく、驚くほどお互いに淡々としていた。

ただ傍らでギャーギャーと泣き喚くその女の子に同情した。

「駄目じゃない、『彼女』を泣かしたら…。」

「彼女じゃないよ…。」

そう、だからと言って私をまだ彼女とも言わなかった。

「あの子の方からなんでしょう?」

「うん…。」

私の時もそうだった。
声をかけてきたのは彼だったが、練習試合を通じてデートの約束を取り付けたのは私だった。

学校が違うからこそ、会える日に頑張り過ぎたかもしれない。
不自然な私がお互いを傷つけてきた。
決してあの子が原因ではない。原因であってはならないのだ。

「今度は大切にしなよ…。私みたいな扱いしたら駄目だからね。」

「イヤ、あいつとも終わりさ。あいつは今日のことを許してくれないさ。」

そう、あの子がそう言うから。
だから私を追いかけない。
嫌われてまで求めようとはしない。

私が「あの子を追いかけなさい」って、言えば追いかけるのだろう。
もし、あの子が「どうか結城翔子さんと別れないで。」って、泣いてお願いされたら私を追いかけるのかと思えば吐き気がする。

だから私からは彼に何も提案しない。

泣いてすがりつく女らしい女が彼にはお似合いだ。
ただそれが私やあの子じゃなかっただけだ。

「どうせ別れるのに『最中』に乗り越んで悪かったわね。
片方は残ったかもしれないのに…。」

春休みを前に私の恋は終わった。
喜ぶことではないが悲しくもない。(終)