ウソです!
こんな事が現実に起こるなんてあり得ないです!
憧れの真田先輩が私だけに話かけてくれて、私だけにこんな優しく微笑みかけてくれるなんて…。
世界が変わって見えるです………。
「そんなに驚かないで下さい!
まるで普段の私がよほど不細工みたいです!」
「えっ?違った(笑)。」
「真田先輩、ヒドイです!」
「ハハハッ、冗談だよ。でも今日の里見ちゃんは見違えるほど可愛いよ!
ツインテールも、リップグロスも、良く似合ってるよ。」
「部活以外でメガネを外すと不安です。」
「部活の時はコンタクト?」
「いえ、裸眼です。」
「それでか。里見さんはショートパスには素早く反応するのに、ロングボールに遅いのは視力のせいか…。」
「そうなんです、コンタクトは苦手なもので…。」
「元オランダ代表のダービッツみたいなゴーグルをした名選手もいるさ。
一度考えてみたら?」
「ゴーグル…。あぁ、宮益先輩みたいなのですね。」
「宮益?」
「あぁ、私としたらまた漫画の話を…。スラムダンクの登場人物です…。
アニメや漫画の話ばかりですみませんです…。」
「あぁ、それなら京子から借りて読んだよ。面白かったな。」
「そ、そうです…か…。」
あぁ、やはり真田先輩は当然のように京子先輩の名前を…。
「もし、スポーツグラスやゴーグル選びに迷ったら…。」
「真田先輩、聞いてほしいです。
今、眼鏡を外していても良いことがひとつだけあります!」
「何?」
「近くに居る大好きな人の顔がぼやけて見えるから緊張しないですむです!」
顔が熱いのはファンデーションで皮膚呼吸が妨げられてるからです。
涙が出るのは慣れないつけまのせいです…。
真田先輩に困らせた顔をさせたのは私のせいです………。
「あの、里見ちゃん、それって?」
「誤解しないで下さい!
こんな私だけに都合の良い夢を見せてくれて、明日になれば何も変わっていない現実に引き戻される。
そんな残酷な天使の真田先輩なんて大嫌いです!」
「おい、里見ちゃん…。」
「私を可愛い後輩と少しでも思うなら追いかけないでほしいです…。
何もかも壊してもいいなら追いかけてくれてもいいです…。」
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「真樹ちゃん、結局告白できなかったです…。」
「ちゃんと伝わったよ。
ごめんなさい、私、余計なことしたよね?」
「今度、ゴーグル買うのに付いてきてほしいです…。」