優矢くんと愛ちゃんの秘密の作戦が何だったのか?
私にはやっとわかりました。
右サイドバックの攻め上がりを促すパスを、愛ちゃんも上がることで防ぐというものでした。
小菅くんとしては優矢くんを引き付けてからの、絶妙のパスのはずでした。
しかし、優矢くんと愛ちゃんは読んでました。
優矢くんが小菅くんの足を止めた時点で愛ちゃんは静かにダッシュしてました。
そして真樹ちゃんより早くボールに追いつくと同時に真樹ちゃんを置き去りにしました。
「上手くいったです…相良くん。独走です…。」
「小菅、俺と里見ちゃんの勝ちだ。
お前はいつものペア、鳥居先輩とのタイミングでパスを出した。
宇都宮さんの方が足も反応も遅いことを考慮しなかったお前のミスだ…。
追加点はもらった。
俺達はひたすらこの練習をしてきた。」
「相良…!」
(うそ、せっかく小菅くんがチャンスに私にパスを出してくれたのに…。
追いつけずに愛ちゃんに奪われるなんて最低…。
私、何回ミスするんだろ…。
あと何回みんなに怒られるのかな?
次はさすがに高坂先輩も許してくれないよね…。
私なんて…やっぱり…。)
「サイドを駆け上がるって、気分爽快です。
私がこのままセンタリングを上げてアシストを記録するです。」
(ううん、まだ諦めるな宇都宮真樹!
私はまだやれる!
今からでも愛ちゃんを止める。
何としても止めなきゃ、どんな手段を使ってでも!!)
「あの子はまさか…?
い、いかん!」
(ごめんね、愛ちゃん、後で私のこと嫌いになってもいいよ…。
私、もうこれ以上高坂先輩に残念な奴って、思われたくないんだ…。
ホントごめんね…。
後ろからスライディングして…。)
「やめろ宇都宮さん。ぐあぁー!…うぅぅ…。」
私も優矢くんも、ううん、真田先輩や高坂先輩でさえ、この状況が直ぐに飲み込めませんでした。
攻め上がる愛ちゃんに対して真樹ちゃんは反則覚悟で後ろからタックルをしましたが…。
そこには愛ちゃんをかばって、間に飛び込んだ白組ディフェンダーの南部先輩が足を抑えてうずくまっている光景がありました。
「キャー!!」
タックルをした真樹ちゃんと被害を免れた愛ちゃんが悲鳴を上げる!
「南部先輩!どうして?」
「き、君は仲間を再起不能にするつもりだったのか…?うぅ…。」
慌てて三好先生が試合を止めて南部先輩の足を看る。
真田先輩はレッドカードを出した。