男子チームに準じて、ダブルボランチを敷くこの4-4-2システムでは、守備と攻撃が大まかに分担されていた。
紅組は茉奈ちゃんが攻撃、佐竹が守備を。
白組は大友が攻撃、山名ちゃんが守備を主に担当していた。
だから中盤で高坂がボールを持てば、直ぐに山名ちゃんがマークに来ると思っていた。
だが、実際に高坂をマークに回ったのは攻撃的ミッドフィルダーの大友だった。
大友は183センチの体格を活かし、力任せに小柄な高坂からボールを奪う！
「嬉しいぞ、大友。
私からボールを奪う為にテクニックを捨てて、なりふり構わず身体をぶつけるその姿勢！
さすがに女子ではここまでの当たりはいない…。」
「テクニックに翻弄されない為には、こうするしかないだろ、瑞穂ちゃん♪」
「上半身の筋肉だけは合格だ。
だが、足元がまだまだだな、大友！」
チャージによろめいたフリし、右足から放たれたボールは一瞬の隙を突いて大友の股を抜く。
すがさず抜かれたボールに高坂が追いつくはずだった。
しかし、それよりも早く…。
「キィエーイ！」
大友の後ろを直ぐに南部さんがスライディングで詰める！
高坂よりも一瞬早くボールに追いつき、高坂の脛に当たったボールは白組のもう一人のセンターバック伊東がクリアする！
「そんな…。高坂先輩が止められるなんて…！」
紅組の全員が落胆し、白組全員が驚喜の声を上げる！
控えの一年生も観衆も驚きを隠せない。
「私一人に大友と南部の二人がかりとはな、いい作戦だ…。実に面白い…。」
「二人ではありません。
股抜きをした時に山名さんは反対側のコースを消し、伊東さんは自分が追いつけなかった時のフォローに備えていました。」
「四人がかりか？
よほどこの1点を守りたいようだな！」
「高坂さん、貴女にはそれだけの価値がある。
自分一人では無理でも全員が一丸になれば貴女を止められる！」
「フフフ、自らを過小評価するな南部！
本気を出せ、お前なら単独でも私を止められるかもしれんぞ。
開放して…みろ…。」
白組の作戦は単純だった。
高坂以外がボールを持てばダブルボランチが下がり6バックでゴールを固める。
高坂がボールを持てばダブルボランチと二人のセンターバックが四人がかりで囲い込みに行った。
「…ゾーンプレスか…。」
高坂は攻略出来そうで出来ない白組の守備の堅さを楽しんでいるように見えた。
そう楽しんでいたのだ。