榎田からのパントキックが放たれ、白組の左サイド・相良が疾走する。
中よりに位置していた小菅は出遅れ、大きく相良に差をつけられた。
偶然か必然か、テクニックとコンビネーションでボール支配する紅組に対し、パワーとスピードでの一発カウンターを狙う白組の図式が出来ていた。
「小菅、サイドは俺が頂くぜ！お前が言った通りにな！」
「慌てずマークを離さないで！島津くんは武田くんを、恵は私が、宇都宮さんは相良くんを止めて！」
最上さんは冷静に島津以上にディフェンスラインを指揮していた。
しかし、トップギアに入った相良を宇都宮さん一人に任せたのはミスだったかもしれない。
「ええと、落ち着け私。『ディフェンスの基本は奪うより、抜かれないこと、遅らせること』だから…。」
「一発カットを狙って飛び出さないのは上出来だよ、宇都宮さん。
でもそれだけじゃ俺のクライフターンは防げない。」
軸足にボールを隠したかと思った瞬間、相良の身体が反転し、その隙に宇都宮さんを抜いた！
「…相良め！いつの間に私の技を…！」
フリーになった相良はセンタリングを上げた。
「大き過ぎだ！ツートップには合わない！」
左サイドから上がったセンタリングは右サイドに流れてスローインかと思われた時、柳生ちゃんを振り切って疾走する島ちゃんが追いついた！
「島先輩も優矢くんも何でこんなに早いの～？」
誰もが逆サイドからの島ちゃんのセンタリングと思った。
百地もそれに備えてたが、左足で中央に流したボールに百地は反応出来なかった！
そこに走りこんだのは男子一番のパワーファイター大友だった！
フォワードのマークに気を取られた最上さんと島津はフリーで大友にミドルを撃たせてしまった！
しかし…紅組にはまだ守護神・結城ちゃんが居た。
「えっ？俺より上手くね？」
と思う様な抜群の横っ飛びで弾丸ミドルをセービングした！
「翔子ちゃん凄いー！」
プレーは中断し、拍手が起きる。
「手が痛～い、男子のシュートは違うわね。」
コーナーキック。
高坂も小菅も居ない白組は相良が蹴ることになった。
紅組は変わらずマンツーマンで武田、中島をマークし、佐竹は大友に注意してた。
しかし…。
「キェエーイ！」
大友の陰から飛び出し、誰よりも高くヘディングシュートを放ったのはセンターバックの南部彩さんだった。
結城ちゃんも一歩も動けない鮮やかなゴールだった。白組が先制。