翌日練習後の帰り道
「おい、恵里菜!何怒ってんだよ?」
「別に~?優矢くんって、サッカーを教えるのが大変お上手ですこと!
私より愛ちゃんの方がアニメや漫画に詳しいと思いますけど!!」
「えっ?何だよ!
そんなことかよ?
俺が里見ちゃんに?
ないないない!さすがにあそこまでのオタ女はないわ~。」
「ホント?じゃあ、秘密の作戦教えて?」
「言ったら秘密にならないだろ!
いくら恵里菜でも駄目だ!」
うん、嬉しい…。私は優矢くんに愛されてる!
私はもう、今までのフラれ女じゃない。
自信持たなきゃ…。
例え愛ちゃんが優矢くんを好きでも、私が優矢くんに選ばれる女になればいいだけよ…。
「おっ、おい恵里菜!
あれって南部先輩だよ!」
「ホントだ…。あれが三年生の彼氏さんかぁ」
山名先輩に聞いた話じゃ、二人は時間があればずっと一緒に居るって言ってたけどホントみたいです。
でも手も繋がずにずっと無言で…。
あれ?
駅じゃない方に曲がって行って…。
確かそっちは悪名高き「カップル公園」!
周囲が恥ずかしくて、私たちは行ったことないけど…。
「スゲー、やっぱり上級生は違うぜ、観て行こうぜ!」
「優矢くん、それって覗きじゃない?
悪いよ!」
「もしも南部先輩が無理矢理付き合わされてるなら、ここで助けない方が酷いだろ?」
結局ベンチで話す二人の先輩を、植え込みの陰から盗み聞きすることに…。
ホントに覗きじゃない!
でも優矢くんと二人でイケナイことしてるスリルが…。
「蒼磨様…。以前にもお断りしましたが、自分はその様な立場の人間ではありません。
どうか一橋家の家名に傷をつけることだけは…。」
「彩くん、南部家と一橋家のことを言ってるのではない!
僕は彩くん個人の気持ちを知りたいんだ!」
「ねぇ、これってカップルの会話?」
「こっちが聞きたいよ!」
やっぱり南部先輩の恋愛事情は普通じゃないわ!
「南部家に生まれた自分は物心ついた時より、一橋家次期当主の蒼磨様に尽くすのが使命です…。
自分の心も身体も蒼磨様のモノ…。
しかし、蒼磨様には奥村家のお嬢様が…。」
「あんな女よりも彩くんを選びたいんだ僕は!
君が家元の言うことだけを聞くならば、何故サッカーを始めた?
君が初めて言ったワガママだ!
それは君に意思がある証拠だ!」
「自分にもわかりません…。
ただ、高坂瑞穂さんが輝いて見えたのです…。」