彼の屋敷
「はい、お化粧はこれでバッチリよ。
後はベールを被るだけね。
衣装も化粧品も最高級の品揃えね。
流石、イカロス元老院議員ねぇ。」
「この婚礼の儀式は厳然たる国家事業だからな。
テーゼよ、協力ありがとう。」
「何を言いますやら。
嫁入りは女の最大行事ですよ!断られたってお手伝いさせていただきます。」
「準備ハ整イマシタカ?」
「ラオ王国の使者よ、待たせてすまない。
今、屋敷を出る。
婚礼の儀式はそちらの国で行われる故に、国民にはせめて花嫁衣装だけでもを広場から市場を経由して観てもらう。
それくらいは構わないだろう?」
「マケドニウス大臣ガ、我ガ祖国デオ待チデス。」
「マケドニウスめ、此度の婚姻を取り付けた手柄で遂に大臣か!
丞相に片手が届いたな、ちくしょう、俺もラオで暮らてぇな。」
「カイレフォンよ、永久の平和が約束されるなら、自由に両国を行き来出来る日は遠くない。
今日はその足掛かりとなる日だ。」
「必ず、必ず会いに行きます!
ありがとうございます。
このご恩は一生忘れません。
私は、私は…。」
「ソレントよ、泣きたい気持ちはわかるが、それを耐えて背中で泣くのが男だ。
今日は晴れの日なのだぞ。」
「はい、お義父様。申し訳ございません。」
「ソレントよ、留守を頼む。
私とカイレフォンは護衛の許可が降りた故にラオ王国まで動向し、婚礼の儀を見届けて来る。
勿論、サンドロス王子とマケドニウスの様子も含めてな。」
「イカロスもプルートも居るから、何かあったら彼らを頼れ。」
「それでは…お元気で…。さようなら。」
「…さようなら…。大好きだったよ…。貴方を忘れない…。」
「こちらの四人の男は永遠巫女様の従者だ。向こうで生活を共にする。」
「ハイ、デハ参リマショウ。」
自由広場
「来たぞ。花嫁衣装を着た永遠巫女様の馬車だ。
何と美しい!
美の女神の様だ!」
「闘技場の時よりさらに成熟したようだ。」
国境近く
「我が友よ、マケドニウスは本当に激怒しないだろうな?」
「責める理由が無いさ、奴の目的は永遠巫女という人気そのものだ。
なに食わぬ顔して受け入れるのがマケドニウスさ。」
「父ちゃん、あたいは自分の意思でラオに行って運を掴む。」
「リリム、まさかこんな早くお前を嫁に出すとは。」
「あたいは身代わりなんかじゃないよ。父ちゃん、愛してる。」
(次回最終回)