「ねぇ、真田くん、内藤さんと高坂さんとの二人と付き合ってるって本当?」
「…ええ、まぁ…。」
「ふーん、じゃぁ、毎日とっかえひっかえ違う女の子の身体を『食べ比べて』るんだぁ?」
「お、俺はそんな付き合い方は…」
「真田くんも冷たいなぁ、ハーレムが欲しいなら最初に私に言ってくれたら喜んで一員になったのにぃ~。」
「冗談は…止めて下さい。」
「冗談じゃないこと…証明してあげよっか?今ここで…」
はっきり言おう。
人生最大のピンチかも知れない。
俺はこの女性が苦手だ。
この人は簡単に男の俺を組み伏せることができる。
柔術の心得があるのを悪用してる。
抵抗という抵抗も出来ず、ただ情けない声で拒否の意志を表明するのが精一杯だ。
援軍を望むばかりだった俺に救いは来た。
「ガラッ!」
勢いよくドアが開き、小さな悲鳴の後で京子は叫んだ!
「三好先生!まー君から離れて!生徒会室で何やってるんですかー!」
そう、俺は放課後、生徒会顧問の三好真理亜先生に呼ばれたかと思うとこの有り様だった。
「内藤さんも来たの?じゃぁ二人で楽しむ?」
「止めて下さい、先生!何かもう…色々と突っ込み所が多すぎて…。」
「軽い冗談じゃない。私が誰かのハーレムに入るなんてご免だわ。自分のハーレムは欲しいけど(笑)。」
「そういう所が信用出来ないんです!今日に限らずいつもいつもまー君を…。先生にはちゃんと…。」
「勿論よ、私が徹を裏切る分けないでしょう。ただ毎日出世欲の塊の同僚を相手してると、若い肉体にムラムラするのよねぇ。」
「だからと言って男子生徒を狙わないで下さい!」
「まぁ別にバレて生徒の一人や二人退学になっても、あたしが面倒見てあげるけど(笑)。」
「さらっと怖いこと言うなー!榎田君に言い付けますよ!」
そう、三好先生は我がサッカー部の正ゴールキーパー榎田徹と極秘に交際している。
このことは極一部の者しか知らない。
入学当初、不良の榎田を俺と三好先生でもう一度サッカーを始めさせたのがきっかけだ。
榎田は家業を継ぐのが嫌で、高校でのサッカーの情熱を失っていたのだが、三好先生と俺で更生させた。
「自分から強力なライバル作る所がまー君らしいね。」
と京子に呆れられたけど。
去年の夏、榎田は恩と感謝の意味で先生に告白したが三好先生はOKした。
バイク事故で亡くなった弟さんに彼が似ていることは俺しか知らない。