あ~もう!私にもわからないから、これ以上質問しないでくれ!
仕方ないだろ!衝動と言うやつだ。
あの時はどうしてもアイツ-私を負かした真田正行にファーストキスを(頬だけど)捧げたくたくなったんだから。
中学全国制覇、日本代表候補、そんなモノは今の私に何の救いにもならない。
技術がないなら磨けばいい、体力がないなら鍛えればいい。
だがこの衝動は…相手に委ねられている。
「中島、恋とは何だ?」
昼休み、親友の中島恵に聞いてみた。彼女は私の一番の親友で女子サッカー部のメンバー集めに最も協力してくれた。
「うん?真田なら諦めな。」
議題の核に入る前に却下された。彼女は心が読めるのか?
「な、何故わかった?」
「昨日あんな大胆なことしといて、今の瑞穂の惚けた顔見てりゃバレバレよ!
全く、気の強い女の子が自分を負かした男に恋するなんてアニメだけにしてよね!」
恋、やはりこれは恋なのか?
「違う!恋なんかじゃない。ただ真田の事を考えると胸が苦しくなり、会いたい欲求が強まるのに、恥ずかしくて会いたくないだけだ!」
「それを恋って言うのよ瑞穂~。はぁ~こりゃ重症ね。天才サッカー少女様の初恋を赤飯炊いて応援したいけど、相手が悪すぎよね~。」
そう、最も憂慮すべきはそこだ。問題は私と真田だけの問題じゃないことだ。
昨日私はあの女の…。
「何やってるの!二人とも離れてー!!」
彼にキスした私はあの女に引き離され、あいつはあの女に襟首を掴まれて引き連られていった。
根性無しの私はただ二人の仲睦まじさを見てるだけだった…。
私は負けた。
サッカー選手として負けたことは悔しくない。
鍛えてリベンジすればいい。
だが…女としてあの女に負けたのは悔しくて仕方ない。
そこには私の入れない絆があった。
私はファーストキスの相手を目の前で他の女に連れ去られたのだ。
「はぁ~切ないね、恋と失恋が同時に来るって今の瑞穂みたいな状態なんだろね。」
「かもしれないな。だが中島、私は諦めない!欲しいモノは手に入れる。邪魔者は消す。」
「やめなさいよ瑞穂!恋愛はグランドの取り合いと違うの。その勢いなら授業中や男子トイレまで押し掛けそうね?」
「いけないか?」
「駄目に決まってるでしょー!今日から部活一緒なんだからやるならサッカーでアピールなさい!」
同じ部活…そうだ、内藤京子、せめてサッカーのフィールド内なら私のものだ。