「私、神様って居るって思うんです。」
「どうしたんだ?急に。」
演技でない自然な女言葉が身についてきた。
時の流れからしたら当然かな?
「だってね、ケイとミシェルが似ているのって何の理由もなかったんですよ。
そんな二人が出会ったって凄い奇跡ですよ。それに…何とか今日までやってこれましたぁ」
ニュースを観る。
昨夜も観たが何度観ても気持ちがいい。
科学者ミシェルの晴れ舞台だ。
新薬が未承認薬ながら画期的な発明だと、海外メディアが取り上げた事を日本のマスコミが取り上げた。
「今度こそあの組織も終りだ。新薬の特許で得た金で奴らの資金源を断てば自然消滅だ。」
「ミシェル本当に凄いですぅ。」
「僕もこれで、会社で何人かに『桂木さんてテレビに出てたミシェル久我山に似てますよね?』って言われるかもな?」
何気ない会話が楽しい。全てに解放された彼女は明るくのびのびしている。
ただ…。
「なっ…。その口調は女ですよねぇ?貴方と言う人は何で!私と言う者が、ありながら!他のメス猫を相手にするんですか~!御子神さん狙撃して~」
とこんな風に解放された彼女は異常なほど嫉妬心が強い(笑)。
「おい、時間無いぞ!今日は早番だろ?」
「あ~もう、またはぐらかされたですぅ。続きは夜ですからね。『行ってきます。ご主人様』」
彼女はミシェルの研究所で『働いて』いる。三人で提案した彼女の社会適合の一環だ。
僕やミシェルに依存しない彼女自身の自立を自ら求めたからだ。
勿論、両性具有者としての壁も、人間としての壁も永遠に立ちはだかるだろう。
だが、困難を持ち合わせていない人間などいない。
多かれ少なかれ人は「不安定なまま安定する」しかないのだ。
何気ない日常の中で泣いて笑って、また明日になる。
絶え間無い努力の先に「普通の明日」があるのだ。
「なぁ、決めたんだけどー。」
「何ー?時間無いよ~」
「君の名前。研究所が付けた『ありす』じゃ無く、君を捨てた両親が付けた名前でも無く、愛する僕が君に送る名前。
『桂木真琴』。どうだ?」
「まことかぁ、男でも女でも通じる名前で嬉しいですぅ。何か私らしいかも。」
「君は今日から生まれ変わる。そして明日また生まれ変わる。その都度、僕と添い遂げよう。愛してる。」
「私も、『桂木真琴』は桂木ケイを愛してます。」
以上、どこにでもある?ありふれた?いわゆる一つの恋物語でした。
ソイトゲ(完)