
法廷で死刑が宣告されたソクラテスは言いました。
「私に死刑が宣告されたのは、私に知恵や道徳心が不足していたからではない。
私に不足していたのは厚顔無恥(こうがんむち)の不足だ」
と述べました。
つまり、ソクラテスがプライドを捨てて、形振り構わずに泣き喚き、自らの無罪を訴えるのは容易だったのです。
またその当時、被告が自分の息子を法廷に連れて、裁判官の同情を引くことは良くあることでした。
しかし、ソクラテスはそれを望みませんでした。
彼は主張します。
「死を免れることが困難ではない。
悪を免れることが困難である」
と述べました。
そもそも「プライドが高い」とは誉め言葉です。
誇り高い振る舞いと虚栄心(きょえいしん)とは別物です。
先代の賢者達は常に名誉を重んじてきました。
トーマスモブレーは
「君に身体、命、恥さえも捧げるが、
我が墓に刻む高名な名前に、
不名誉を供に刻むことはしない。」
と言いました。
賢者は常に命以上の名誉を追い求めた結果、名前と言葉が残ったのです。
これがソクラテスの
「大切なのはただ生きるのではなく、
善く(よく)生きることだ」
に通じるのです。