卒論(Extended Essay)⑥ ~よい論文とは?その2~ | LSE・経済学修士留学戦記(イギリス経済学大学院留学)

LSE・経済学修士留学戦記(イギリス経済学大学院留学)

2012年夏~2013年夏にかけてLSE・Economics修士に在籍。
これから経済学大学院へ留学する人に向けて、この1年の戦いを記録する。

今回は、前回に引き続き、かなり主観的にはなりますが、よい論文(高得点が取れる論文)とはどういうものかについて、引き続き考察していきたいと思います。



さらなるRobustを求めて~そして限界を認める


昨日紹介したように、内生性の問題をどう対処し、結果がRobustであるかどうかを確認していくことが、実証論文を書く上で重要なポイントになりますが、昨日紹介した基本的な対処法以外にも、院レベルの計量経済学を学ぶと、更に色々な手法を学ぶことになります(例えば、GMMなど)。


このような授業で習った知識をフル活用しながら、自分はこんなに色々な手法を知っているということをアピールすることが重要になるかと思います。


(完全には難しいですが)Consistentな分析ができたら、今度は効率性(Efficiency)を求めて更にRobustな結果が出るよう、色々な手法や回帰分析に挑戦してみるべきかと思います。



ただし、Robustな結果を得るため、②や③のような手法をたくさん試していくと、必ず意図した結果とは異なる結果が出ることがあります。


意図しなかった結果が出た場合は、その回帰分析結果は書かないでおくことが、論文を書く上で最も簡単な方法です。

また、結論に沿わない結果を書くことは問題だと思う方もいるかもしれません。



しかしながら、その考え方は全く逆で、計量の観点からよく指導してくれたクラスティーチャー曰く、


「◆◆という問題に対処するために、●●という手法を用いたが、有意な結果は出なかった」



と限界を認めることが、大変重要だと言っていました。


「実証の手法に欠点があることを認めたうえで、評価者に、論文に改善点がまだあることを認識していると伝えることがよい点数をとるためのポイントだ」

と言っていました。


そうでなければ、評価者からは、「執筆者は問題があるのによく分かっていない」とみなされてしまうそうです。







 無難な実証論文。しかし、高得点は難しい


前述したように、実証論文でよい点数を取るためには、いかに様々な回帰分析を行い、Robustな結果が得られるか、がキーになります。


しかしながら、また前述のクラスティーチャーが言っていたことですが、


「特にマクロ変数を使った実証分析の場合、内生性の問題を完全に対処することはほぼ不可能。学術論文の中でも、厳密に内生性の問題に対処できている論文は極めて少ない」


と言っていました。



このように、実証論文を扱った場合、どうしても問題が内在したまま、終わってしまうケースがほとんどです

また、データ入手の制約上、あっと驚くような新しいことを執筆することは難しいという問題もあります。


そのため、一般的なOLS等でマクロ変数の関係を分析するような実証論文で高得点を狙うことは大変難しいというのが個人的感想です。



なお、私は、内生性の問題を対処するために、授業で習った手法をできる限り使い、前述した方法を色々行いしましたが、結果は64点(Merit)という結果でした。


また、リサーチ系の会社に勤めていて、この手の論文を今までも何度も書いたことがある友人は、私と同様にマクロ系の実証論文を執筆していたのですが、かなり厳密に分析を行っていて、私の1枚も2枚も上手の実証論文を書いていると認識していたのですが、その彼の論文でさえ、ちょうど70点(ギリギリDistinction)という結果でした。




彼は、今までの職務上の知識と経験が豊富にあったにも関わらず、この成績でしたので、全く今までこの手の論文を書いたことがない生徒にとっては、実証論文でよい点数を取ることはかなり厳しいかもしれません。

私が知っている他の高得点者(例えば、先日書いた89点を取得した友人や、75点を取得した友人)は、実証論文ではなく、数式をたくさん使ったモデル系の論文を書いていたようです。

しかしながら、論文執筆に関するバックアップ体制がほぼないというLSEの状況の場合、このような数式をふんだんに使った高度な論文やしっかりとした実証論文が書けるかどうかは、残念ながら、今までの基礎・積み重ねに依存するところが大きいのではないかという印象でした。