宴会で一番気をつかうのが先生であった。
みんな、そんな先生の気性を知っている。
ぼくが泊る部屋は、先生が愛用した二間つづきの「東雲」で、
床の間に、先生の揮毫になる、「今日無事」の額がかけてあった。
窓の前は三吉山で、その後方に蔵王連峰が霞んでいる。
奥の峰に霧がかかり、山の稜線がぽうっとにじんでいる。
上空は黒雲で、水墨画のように見えた。浴衣に着がえ、温泉に入った。