俺『自らの足で歩いてこそ、貧乏人のひとり旅なのだ! 飛行機なんかに使う金はない! 新幹線なんて猶予もない! てか、普通の電車にすら乗る金がない!』


 ……。


 貧乏人の貧乏の悔しさによる貧乏旅のスローガンを掲げたら、余計に貧乏が悔しくなった。


 ひとり旅がしたい! しかし金がない! しかし金がないことが悔しい! 意地でも金を使った旅をしたい俺は、金をコイントスに使う旅を思い付く。


 ピッーン♪と弾いた100円玉の100マークが出るか花が出るかで、右に曲がるか左に曲がるか、あの坂を登るか否か、通りすがる通行人に声をかけてみるか否か、を決める。


 それは誰にでもできる(貧乏人にもできる)硬貨一枚分くらいしか価値のない旅。読んでくれても、硬貨一枚分くらいしか後悔しないはずだぞう!




 最初にたどり着いた先は、通勤ラッシュ真っ只中の駅だった。むさ苦しいサラリーマンたちが作るは、むさ苦しい渋滞!


俺「!?」


 そのなかに可愛らしい女学生を発見する! 可愛らしい女子を前にすればするほど緊張してしまうのが、男子校出身生の性! しかし、このまま性に流されるにはもったいない美貌だ!


 ピッーン♪ コイントスの結果出た100のマークを見て、勇気100倍になった俺は頑張って声をかけてみた!


可愛らしい女学生「はい?」


俺「……」


俺「……この100円、落としませんでした?」


 しかし勢いで行ってみたものの話題はなく、持っていたそれを見せるも「私のじゃないと思いますけど」と言って去って行ってしまった。硬貨一枚では計りきれない後悔! ちぐじょー!




 さらに幾度かのコイントスを重ねた末たどり着いた先は、見渡すかぎりに生い茂る緑と新鮮な空気! 田舎道だ。ここで俺は世界一優しい人物に遭遇した。


叔父さん「おはようございます!」


 それは、ランニングの叔父さん叔母さんたちだ。通りすがる人たちに声をかけようコイントス!の結果、思い切って挨拶をしてみたら全員が全員こころよくそれを返してくれた。


 硬貨一枚で得た、高価な出会い。いつか自分も、ひとにそんな効果をもたらす叔父さんになりたいなあと思った。




 その後もコイントスを重ねること8時間! パンパンになった足を見てそろそろ帰ろうと思ったとき、はじめて——


俺「ところで、ここ、どこだ?」


 自分が見知らぬ土地を歩いてきたことを思い出した。帰り方を知らない。運に任せて(適当に)歩いてきたため、その目処すら立たない。


 ……。


 要するに、俺は迷った。


俺「い、いや、ないよねっ! 絶対ないっ! 19歳にして迷子とか全然ないよねっ!」


俺「運でここまで来たんだから、これからも100円玉弾いてれば、なんとなく帰れてるはずだよねっ! そう、それだっ!」


 そこからも更に100円玉コイントスを行う! 『100』が出たら左! 花が出たら坂を登る! それらを繰り返すこと、約1時間!


 ……。


 更に迷った。硬貨の後悔は、まったく先に立たなかった。


俺「ぐすんっ、ぐすんっ、泣いてなんかないやいっ」


 19歳にして迷子になりながら、19歳にして半べそをかく。人間というもの迷子を前にしては等しく三歳児に戻るらしい。


 夏の日差し照りつける。背中とTシャツがぴったりとつく。道端では、干からびたモグラの氏骸に蟻が集っていた。


俺「ぐすんっ、ぐすんっ! 泣いてなんか、ないやあああーいっ!!」


下校中の小学生たち『……』




 その後、小学生たちに近くの駅まで案内してもらって、何とか帰ることができた。


俺「ありがとう君たち。これはお兄ちゃんからの、ささやかなプレゼントだぞう」


 駅に着いたとき、硬貨一枚では計り知れない親切をくれた彼女たちに、硬貨一枚以上に価値のある100円玉をあげることにした。


 『お金なんかもらえないよー』と言ってた彼女たちだったが、こいつとしてきた硬貨一枚以上に価値のある旅のことを話すと——


小学生たち『大切にとっとくね♪』


 ——と言って、笑顔で受け取ってくれた。


 硬貨一枚で行ける(貧乏人でも全然行ける)高価な旅! いちど行ってみても後悔はしないはずだぞう!←



俺『飛行機なんか使わない! 新幹線なんか邪道だ! 自らの足で歩いてこそ、ひとり旅なのだ!』


訳:飛行機なんか使う金がない! 新幹線なんて猶予ない! 自らの足で旅をしてこそ、貧乏人なのだ!


 ひとり旅がしたい。しかし金がない。自ら掲げた金欠スローガンに悔しさを覚えた貧乏大学生は、別の意味でお金にかける方法を思い付いた。それは——


『ピッーン♪』


 ——"コイントス"だ。宙に弾いた100円玉の『100』マークが出るか花が出るかで、右に曲がるか左に曲がるか、あの坂を登るか否か、通りすがりの誰かさんに声をかけてみるか否か、を決める。


 それは、硬貨一枚分の価値の旅。硬貨一枚分の出会いを伴う旅。読んでくれても、硬貨一枚分くらいしか後悔しないと思うぞう!




 幾度かのコイントスの末たどり着いた最初の通過点は、通勤ラッシュ真っ只中の駅! むさ苦しいサラリーマンたちが作る、むさ苦しい空気の中——可愛らしい女学生を発見した!


 しかし、可愛い女子を目の前にすればするほど緊張してしまうのが男子高出身生の性! しかし、このまま性に流されるにはもったいない美貌だ!


『ピッーン♪』


 コイントスの結果、出た面は『100』マーク! 勇気100倍になった俺は、頑張って声をかけてみることにした!


俺「あの」


可愛らしい女学生「はいっ?」


俺「……」


俺「これ、落としましたよ」


 ……勢いで話しかけてみたものの話題が見つからず、手に持ってた100円を渡すも「私のじゃないと思いますけど」と言って去って行ってしまった。


 俺は硬貨一枚では計りきれない後悔を胸に、あらたな場所に着くまでその100円玉を弾いた。ちぐじょー!




 さらに幾度かのコイントスを重ねた末たどり着いた先は、見渡すかぎりに生い茂る緑と新鮮な空気! 田舎道だ。ここで俺は世界一優しい人物に遭遇した。


叔父さん「おはようございます!」


 それは、ランニングの叔父さん叔母さんたちだ。通りすがる人たちに声をかけようコイントス!の結果、思い切って挨拶をしてみたら全員が全員こころよくそれを返してくれた。


 硬貨一枚で得た、高価な出会い。いつか自分も、ひとにそんな効果をもたらす叔父さんになりたいなあと思った。




 その後も、更に更にコイントスを重ねること8時間! パンパンになった足を見てそろそろ帰ろうと思ったとき、はじめて——


俺「ところで、ここは、どこなんだ?」


 自分が見知らぬ土地を歩いていたことを思い出した。帰り方を知らない。運に任せて適当に歩いてきたため、その目処すら立たない。


 ……。


 要するに、俺は迷った。


俺「い、いや、ないよねっ! 絶対ないっ! 19歳にして迷子とか全然ないよねっ!」


俺「運でここまで来たんだから、これからも100円玉弾いてれば、なんとなく帰れてるはずだよねっ! そう、それだっ!」


 そこからも更に100円玉コイントスを行った! 『100』が出たら左! 花が出たら坂を登る! それらを繰り返すこと、約1時間!


 ……。


 更に迷った。まったく先に立たない、硬貨一枚分の後悔。


俺「ぐすんっ、ぐすんっ、泣いてなんかないやいっ」


 19歳にして迷子になりながら、19歳にして半べそをかく。人間というもの迷子を前にしては等しく三歳児に戻るらしい。


 夏の日差し照りつける。背中とTシャツがぴったりとつく。道端では、干からびたモグラの氏骸に蟻が集っていた。


俺「ぐすんっ、ぐすんっ! 泣いてなんか、ないやあああーいっ!!」


下校中の小学生たち『……』




 その後、小学生たちに近くの駅まで案内してもらって、何とか帰ることができた。


俺「ありがとう君たち。これはお兄ちゃんからの、ささやかなプレゼントだぞう」


 駅に着いたとき、硬貨一枚以上の親切をくれた彼女たちに、硬貨一枚以上に価値のある100円玉をあげることにした。


 最初は『お金なんかもらえないよー』と言ってた彼女たちだったが、こいつとしてきた硬貨一枚以上に価値のある旅のことを話すと、


小学生たち『大切にとっとくねー』


 と言って、受け取ってくれた。どうやら好感を持ってくれたらしい。




 硬貨一枚で行ける、高価な旅! いちど行ってみても後悔はしないはずだぞう!←


 


 夏の砂浜にそびえ立つ、アルプス山脈……我々を童心に返す、アルプス山脈……


俺の童心「軽くFはあるな」


 遠目からでも解るその標高の高さ……俺は童(貞)心の熱を呼び起こされる……


俺の童(貞)心「そーっと、そーっと」


 山頂の景色を拝むべく……さり気なさを装い少しずつ近付いていく……


 友人たちとの談笑に勤しんでる隙に近付く……やがて山頂の絶景を拝める距離までこじつけた、そのとき——


Fカップのギャル『ん?』


俺の童貞「サササッ!!」


 ——見付かりそうになるや否や、自らのテント目掛け風になった。要するに逃げた。




 8月某日。祖父の友人(金持ち)が海岸で開催するパーティーに参加した(タダ飯目当て)。テントに総勢50人くらいのひとが集まって、酒飲んだりバーベキューしたり、酒飲んだり宝探ししたり、酒飲んだりする。


 友人同士で盛り上がる祖父たち。そんなふうに盛り上がれる友人のいない俺にとって、彼等は疎ましく羨ましかった。


 よって俺は他人の青春を拝むくらいなら、他人の性春を拝もうと、タダ飯を諦めてアルプス山脈の散策に出たのだ。さきは戦略的撤退を試みたが、今度こそ山頂の絶景を拝んでやるぞう!


俺「……」


 またもや息を殺して近付く……その視線まさに、鹿を見つけた狩りうどの目つき……いやさ馬鹿の目つき……


馬鹿りうど(俺)「!?」


 馬鹿りうどの目つきで、見てみると……歩くFカップ山脈が友人たちとビーチバレーをやってるのが、見えた……


Fギャル『そーれっ! はいっ!』


その友人たち『こっち! こっちー!』


馬鹿りうど「歩くF山脈がレシーブすると、なぜかボールが3つに見える……(※馬鹿りうどの目にはこう映りました)」


 その後もしばらく視●姦……じゃねえやバカリウッド映画撮影を続けた。しかし見てるそれが性春ではなく、友人と盛り上がる祖父たちの青春と同じものと気付いたとき、見るのを辞めた。




 夕方には、夏祭りもあった。こちらも道行く誰かの性春と青春が交差するイベント。


 俺はその性春もとい浴衣ギャルを求めて、夜道をさ迷う。グヘヘ、相変わらず無防備してやがるぜグヘヘ。


 しかし、こちらは砂浜と違って、絶えずひとの視線がぶつかり合ってるようなところだ……じっくりバカリウッド撮影してるような猶予はない。そんなとき使う技がこれだ!


俺「チラッ、サッ! チラッ、サッ! チラッ、サッ!」


 チラ見と視線逸らしを同時に行うこの技、名付けて『必殺技シ☆ゴ★キ人』! チラ見シャッターの連打で網膜フィルムに焼き付けておいたそれをオカズに、あとでシ☆ゴ★くことが出来るぞう!


俺「チラッ、サッ! チラッ、サッ! チラッ、サッ!」


俺「チラッ……ってあれ? なんだこの貧しい山は? 何も無いじゃないか、ただの貧にゅ——」



【げんむかっこつ】



俺「——あべし!! 暴力反対!!」


母親「やかましい。誰が貧しいだ。馬鹿のことやってるくらいなら、飯買うの手伝って」


 40過ぎて胸パッドしてる貧にゅ……じゃねえや、母親と居合わせた。どうやら妹たちの夜飯を買いにきたらしい。


 他人の性春だけならず他人の青春までもフィルムに焼き付けてしまう技にも飽きてきた俺は、それを手伝うことにした。


 やがて祭りも終わり買い物も済み、Aって嘘まじであり得な……じゃねえや、母親を家まで送ってやることに。


高校生たち『なあ! このあとどーする!? 誰んちで遊ぶ!?』


高校生たち『あいつんち行かねえ? 今夜は徹夜だぜヒャッハー!!』


高校生たち『ヒャッハー!!』


 その道中、たったいま祭りが終わったばかりなのに、さっそく後夜祭の準備をはじめる高校生たちの集団に出くわす。忙しいこって。楽しそうなこって。


 俺は彼等が通り過ぎるのを待ってから、母親に言った。


俺「あれが俺の勝ち得なかった"青春"だよ」


 性春VS青春。俺の中でのこの世紀の一戦に、決着がつく日は来るのだろうか←