バイト帰り。いつもの駐車場で、いつもの猫に絡まれていると——
「どうしたあ?」
——見知らぬおじさんにも絡まれた。
50代くらいの作業着を着たおじさん。コンビニ弁当の入ったビニール袋を地べたに置き、俺たち(俺と、俺の膝の上の猫)の、斜め前に座る。
普段なら、ビビりだけど強がりたいお年頃パワーで厄介者扱いしていたところだろうけど、
ニャンニャンタイム(猫と戯れている時と読みます)に声をかけられたとあっては、そうはいかない。俺は、母性愛に満ちたお兄ちゃんパワーで、見知らぬおじさんの相手をすることにした。
俺「バイト帰りですよ。この猫、人懐っこいみたいで」
俺「あの、良かったらそれ、少しこの子に分けてもらえません? 野良だから腹減ってるみたいで」
おじさんのビニール袋を指しながら、言う。それを聞いた猫は膝から降りて、ビニール袋のほうへ向かった。
するとおじさんは——
おじさん「おうっおうっ」
——猫の頭を叩いた。
もちろん軽くだったけど。そのあと猫の首筋を撫でていたことから、叩く意志は無く、むしろ撫でようとしたのに加減がわからず叩いてしまったことが判る。
まあ、猫はびっくりして俺の背中に隠れちゃったけど。
良く見ると、赤く染まっているおじさんの頬。見知らぬおじさんは、見知らぬ酔っ払いおじさんだった。
おじさん「俺も猫飼ってたんだよ~」
おじさん「朝起きたらおじさんのベッドで、子供産んでたことあってな~。ビックリしたよ~」
おじさん「だから、アナタの猫もアナタのベッドで産んじゃうかもよ~」
俺「いやだから、飼い猫じゃありませんから」
酔っ払いの発言は支離滅裂。まるで、べつの猫の相手をしてるみたいだった。
おじさん「人間は世界で70億人! うち日本人は、たったの一億円だよっ」
いや、単位ちがうから。日本人サマージャンボで買えんのかよ。
食べ物を求めさまよい歩く猫に対し、この猫は、話し相手を求めさまよい歩くのか。そう思えてしまうくらいどうでもいい話しで、脈絡がなかった。
おじさん「中国なんかに攻め込まれたら、一溜まりもないよねえ! あと数年で戦争だよ!」
おじさん「平和なアナタたちも、あとすこしで戦争だよ! B29だよ! どうする!?」
俺「あの」
俺「おじさんは、戦争、参加したことあるんですか?」
おじさん「……」
おじさん「いや……それは……ないけどさあ」
俺「じゃあ、わかんないですよねw」
俺「酔ってます? 控えたほうがいいですよw」
立ち上がると、その場をあとにする。ついつい本音が出ちゃうお年頃パワー。
大学生1「いや~今日は飲んだねえ!」
大学生2「飲んだねえ~ハッハッハ!」
その直後、反対車線を歩く二人の大学生の大声が耳に入る。おじさんはと言うと、道行く女子高生に絡んでいた。
酒は飲んでも飲まれるな。酒は人をだめにするようだ。
まあ、そういう俺もいま飲んでるけど。のどごし。
俺は酔っても猫、叩かないけどなっ←
