円高ストップのための政府と日銀の金融緩和・財政追加策も、実に焼け石に水と言った状
態で、円高トレンドは前進しているようです。あとは為替介入ですが、アメリカは協調し
ないようだし単独介入してもやはり効果はない、という経済学者や市場アナリストの意見
が強く、政府・日銀は市場介入に踏み切るとしても再び金融緩和策と同じような「形式的」
な結果にら終わるでしょう。
それもそのはずです。グローバル世界経済の流れはすでに出来てしまっていることが、な
お更ハッキリしてきました。グローバル世界経済の激流には一国の政府などまるで太刀打
ちできません。
円高定着説をいち早く打ち出した元大蔵財務官・榊原英資青山学院大教授の「9月円高史
上最高値予測」は、多くの世界のアナリストの支持を集めて現実味を増してきました。
こうなったら腹をくくって、輸出企業のマイナス効果より、「円高のメリット」を最大限
生かしていこうでは有りませんか。
まず、中国と並んで日本の貿易収支黒字額は再び急速に増えだしました。所得収支、つま
り外国からの利子収入ですがこれもボロ儲けです。つまり日本の金貸し国家の地位はまた
また向上したというものです。こういう事実を日本メディアはまるで報道せず「デフレで
もう駄目」とばかり言っています。
いま将来性あるグローバル企業では、数は少ないものの積極投資をしているところも多い
のです。
それに問題は金融業です。三菱UFJ銀行などは三菱商事と組んで海外実需企業買収や合
併に乗り出しています。イオンなどの輸入企業は円高を追い風にして更なる価格破壊を進
めています。円高はチャンスでもあるのです。望むべくは将来性ある中国などの新興国企
業の先行買収に、日銀の企業活性化資金が上手く使われれば問題はないのです。
グローバルな輸出企業の中には本当の競争力を持たず、経団連などを通じて援助を働きか
ける企業が有りますが、こういう企業はどのみちグローバル経済では市場から姿を消して
いくに違い有りません。つまり「ゾンビ候補グローバル企業」に無駄金を投じる必要は全
く有りません。
榊原教授によれば、実効レートで換算した円高水準は55円にもなるそうです。ですから
80円割れを起こして円高史上最値が定着したとしても何も不思議ではない。
そうなれば日本ものすごい「金貸し国家」として海外企業買収も思いのままという状態す
ら予測できるのです。円安バブルに甘えていた企業はいよいよ付けを支払うときが来たと
いえます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー(以下ブルームバーグ記事)

★円相場:史上最高値更新は不可避か、年末までに75円も★
  8月30日(ブルームバーグ): 菅直人首相は対ドルで史上最高値に接近する円高に
  対し、「必要なときには断固たる措置を取る」と言明した。トレーダーらは、円は対
  ドルですでに年初来8.6%上昇しているものの、最高値更新は不可避と予想している。
  インフレ率を考慮したウエストパック銀行実効為替相場貿易加重指数によると、円が
  1990年代半ばの円高水準並みになるには、47%上昇する必要がある。日本のインフレ
  率は1998年以来ほぼマイナスだった。ドイツ銀行も同様の実効為替相場に基づくと、
  1995年4月に付けた史上最高値79円75銭に等しくなるためには、円は先週付けた1ド
  ル=85円22銭から同55円まで上昇する必要があるとしている。
  青山学院大学教授の榊原英資元財務官は「実質ベースで、80円を突破した1995年と比
  較して円はそれほど強くない」と述べた。さらに「1995年には日本は危機下にあった。
  それに比べれば、米景気が失速しつつあり、国内経済が比較的良好であるという点を
  考慮すれば、現状は危機的状況とは呼べないと思う」と指摘した。
  15年前と違い、日本は貿易で米国にそれほど大きく依存していない。財務省によると、
  日本の輸出に占めるアジア向けの割合が昨年初めて50%を突破したのに対し、米国向
  け輸出は16%と、10年前の約半分の水準となっている。
           【成長率予想は欧米上回る】
  日本の経済成長は減速しているものの、米国やユーロ圏の成長率を上回ると予想され
  ている。ブルームバーグが調査したエコノミストの予想中央値によると、日本の今年
  の成長率は3.4%の見通しだが、米国は3%、ユーロ圏は1.4%となっている。失業率
  も日本は5.2%と、主要7カ国で最低にとどまっている。
  日本の経常黒字もトレーダーらにとっては好材料だ。貿易赤字のファイナンスのため
  に外国資本に依存する必要がなく、危機の際の資本の避難先となっている。日本の7
  月の貿易黒字額は8042億円と、ブルームバーグのエコノミスト24人の予想中央値4463
  億円を上回った。ブルームバーグのデータによると、日本の外貨準備高は1兆100億
  ドルと、中国の2兆4500億ドルに次いで世界第2位となっている。
  伊藤忠商事の中島精也チーフエコノミストは、「日本は引き続き安定的に経常黒字を
  稼ぎ出し、金融システムは相対的に痛みが小さい」と指摘。さらに巨額の対外債権も
  維持していることから、円は世界景気の下振れリスクに対するヘッジ目的で選好され
  やすいと予想する。同氏は為替介入がなければ円は対ドルで80円を割り込み、史上最
  高値を付けても不思議ではない、との見方を示した。
            【円高に悲鳴】
  大和総研の牧野潤一シニアエコノミストは、円高で日本の製造業は投資を控えるため、
  雇用や家計にも打撃を与える、との見方を示した。
  スズキの鈴木修会長兼社長は26日、円高について「極めて深刻に受け止めている」と
  述べ、現政権に対して「日本が沈没しない対策を立ててから争ってほしい」と強調し
  た。
  日本は2004年3月16日を最後に為替介入を実施していない。その当時の円相場は109
  円前後だった。日銀は03年に過去最高となる20兆4000億円相当の円売り介入を実施し
  た。04年第1四半期の介入規模は14兆8000億円。04年末時点の円相場は102円63銭。
  世界最大の通貨ヘッジファンドであるFXコンセプツ(ニューヨーク)で約90億ドル
  を運用するスコット・エインズベリー氏は、「日本当局は世界の景気見通しを注視し
  ており、円安を望んでいても実際は多分そうならないということがわかっている」と
  述べた。同社は年末までのドル円相場の見通しについて、1ドル=75-78円と予想し
  ている。
            【ドイツ銀の予想】
ドイツ銀行のマネジングディレクター兼通貨戦略責任者ビラル・ハフィーズ氏(ロンドン
在勤)は25日のリポートで、円は年末までに対ドルで1ドル=80円に上昇すると予想75円
に達する可能性さえあるとの見方を示した。1995年以来、日本の消費者物価は月平均で前
年比0.1%下落。これに対し、米国は2.5%上昇している。
同氏は「日本のデフレと米国のインフレを受け、円の購買力は徐々に低下している」と指
摘。「ドル・円相場に対するわれわれの弱気な見方に対して違和感はない」と述べた。