時として暴力が必要な時があると思う。

暴力を正当化するのも賛成できないし教育上の暴力(体罰)なんて、もっての他だと思う。

要は手を挙げる人に愛があるかどうかなんだけど、愛のムチかどーかなんだけど。

ただそれとは別に、これはやっちゃいかん、て時は手を挙げてもしょうがないこともあるんだと思ったことがある。

先日、スーパーで買い物をしてたら小学生の男の子を連れたお母さんが豆腐コーナーで品物を見ていた。
男の子はお母さんの後ろにいてなんかそわそわしていた。
お母さんは豆腐選びに一生懸命ですごい前かがみ。お尻を男の子に向けていた。
その時男の子が動いた。
静かに胸の前で自分の両指を絡ませ、両人差し指は立たせた。そしてそのままおかんのお尻に向かってカンチョーをした。

ナイスショット!

おかんは一瞬身体が浮いた感じがしてでも平然と身体を起こした。
その顔は何事もなかったかのように無表情。鉄の女、サッチャーを思わせた。
くるっと振り返り、何も言わずにおもいっきり男の子の坊主頭にゲンコツをした。
ゴツン、鈍い重低音が響いた。

違う穴にヒットしたらどーすんの!

母親は無言で男の子を強く叱った。


女の人にカンチョーをしてはいけない。それは絶対的な暗黙のルールだ。
社会に生きるジェントルマンなら誰でも知ってること。なぜなら穴を間違えたら大変なことになるから。母親はそれを男の子にゲンコツで教えたのだ。
こーゆー体罰もあるんだ、と思った。
男の子はびっくり顔だったけどいつか分かるんだと思う。僕もびっくり顔だったけど、親子の強い愛を感じてタバコに火を点け思った。

女の人にカンチョーをしてはいけない

母親はまた豆腐選びに夢中になった。
また前かがみになってお尻を男の子に向けてたから僕はまたカンチョーすんじゃないかとハラハラして見てたけど、ゲンコツされた頭をずっとなでなでしてたから悲劇は二度起きなかった。

僕は煙草を靴で揉み消して、次の仕事に向かうためその店を出た。