行動修正~既存の行動を修正する(3)~
おはようございます。
Lovin' Dogsのランパです。
今日は、条件性情動反応についてです。
本来は、恐怖や不安を引き起こさない「中立的な刺激(条件中性刺激)」と、
突然の大きな音など、恐怖や不安を引き起こす「無条件刺激」が、
古典的条件付け(連合学習)により結び付いた結果、
中立的な刺激(条件刺激(元々は中性刺激)を呈示することにより、
恐怖や不安が引き起こされる反応です。
例えば、玄関先に杖が立て掛けてあり、
犬はその傍を通って、いつも玄関ドアを出入りしていたとします。
この時、杖や玄関ドアは、恐怖や不安を引き起こさない、
中立的な刺激(条件中性刺激)です。
(灰色抹消線部:削除,緑字部:訂正・追加 いずれも'11/04/26)
さて、いつものように犬が玄関ドアを通り抜けようとした際、
たまたま、杖が目の前で倒れ、大きな音がして、犬がとても驚いたり、
犬の頭に杖がぶつかり、とても痛い思いをしたとします。
すると、その後、玄関先に立て掛けてある杖を見た時に、
怖がったり、不安な様子を見せたりすることがあります。
これが、条件性情動反応になります。
反対に、喜びを引き起こす、条件性情動反応もあります。
例えば、有名なパブロフの犬の「ベルの音」がそうですし、
身近な所では、
お散歩好きな犬であれば、「リードや首輪、ハーネス」が該当します。
さらに、ご飯を盛り付ける「食器」もそうですね。
ところで、恐怖や不安を引き起こす「不快の条件性情動反応」と、
喜びを引き起こす「快の条件性情動反応」には、
大きな違いが2つあります。
ひとつは、条件性情動反応を示すようになるまでに必要な
中立性刺激(条件刺激)と無条件刺激の対呈示の回数、
言い換えると、必要な経験の回数が、
「不快」の方が「快」よりも少なくて済む傾向がある、
特に、身に危険を感じるような場合には、たった1回の経験でも、
不快の条件性情動反応が成立してしまう場合もあります。
もう一つは、
一般的に犬は般化が苦手と言われますが、
「不快(恐怖、不安など)」を引き起こす中立性刺激(条件刺激)は
般化されやすくなります。
(灰色抹消線部:削除,緑字部:訂正・追加 いずれも'11/04/26)
上記の例でいえば、
形が似ている長い棒や畳んである傘を不安に感じたり、
「玄関先に立て掛けてある杖」だけでなく、
散歩中に出会った他人が使っている別の杖や、
ベンチに置いてある別の杖にも不安を感じてしまったり、
あるいは、頭に杖が当たって痛みを感じた時に、
たまたま視界に入っていた「玄関ドア」にも不安を感じることもあり得ます。
身近な所では、
獣医さんで注射をされた時に痛みを感じ、
その後、注射器や獣医さんだけでなく、
動物病院そのものに不安を感じてしまったり、
獣医さんが着ていた「白衣」をご家族の方が自宅で着ていたり、
抱っこされることにすら、不安を感じてしまうことが起こり得ます。
これは、前回お話したように、
「扁桃体の記憶は、断片的で短絡的なため」に由来します。
驚いたり、痛みを感じた時に、
見ていた杖(形や大きさ、色など)や玄関ドア(同左)、
玄関という場所、その場の匂いなどの要素を断片的に、
また、杖が「倒れる」ことが本質的な危険にも関わらず、
短絡的に杖そのものが危険と判断し、
形や大きさ、色、場所、匂いなどの個々の要素と情動を
それぞれ結びつけて記憶してしまうからです。
このため、新たに五感から入って来る刺激の要素が、
記憶されている個々の要素に一致すればするほど、
関連付けられた強い情動が呼び起こされることになります。
次回は、対処方法である拮抗条件付け(逆制止)と(系統的)脱感作
についてお話ししたいと思います。
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タグ:学習理論(54)
●お断り
脳の神経回路、機能などについての研究は日進月歩のため、
昨日までの通説が翻ったり、新しい発見があったりします。
また、研究者や立場(医者、心理学者など)の違いによっても
見解は異なります。
さらには、脳の同じ部位でも、解剖学的・機能別・絶対的な位置によって
呼び方が変わったり、常識と思われる部分は省略されたりと、
本格的に学んでいない私にとってはかなりハードルが高いです。
このため、これからお話する条件性情動反応に近い事例の資料を元に、
神経回路図や記事の作成を行っていますが、
必ずしも正しいとは断言できませんので、予めご承知置きください。