行動修正~既存の行動を修正する(2)~ | かけがえのない愛犬との暮らし

行動修正~既存の行動を修正する(2)~

おはようございます。
Lovin' Dogsのランパです。

かけがえのない愛犬との暮らし-ウマウマ















ミニシリーズ「既存の行動を修正する」では、

恐怖や不安などの条件性情動反応が対象です。
そして、この情動反応や、対処方法である拮抗条件付けなどには、

脳の仕組みが大きく関わっています。


このため、これらを踏まえていた方が、理解しやすいと思いますので、

大雑把になりますが、まずは脳の仕組みから始めたいと思います。



まず外部からの刺激は、

視覚や聴覚・嗅覚といった五感の感覚器を通じて電気信号となり、

視床に送られます(※嗅覚のみ、視床は経由しません)。


ここで、信号は大きく2つに分かれ、

一方は、大脳辺縁系の一部である扁桃体(核)に直接送られ、

情動の判断が行われます。

もう一方は、大脳新皮質の感覚野に送られ、

詳細に処理・分析され、それを扁桃体に送ります。

さらに、連合野で理性的で総合的な処理・判断を行います。

(下図の左上の経路)

かけがえのない愛犬との暮らし-脳内神経回路410

重要な役割を担っている扁桃体と大脳新皮質について、

それぞれ詳しく見て行きたいと思います。


扁桃体は、外部からの刺激を、個体および種の保存にとって、

好ましいか好ましくないかを情動として判断します。

情動には「(喜び)」か「不快(恐怖、怒り、悲しみ、不安)」の二種類しかなく、

単純な分、結果的に処理・判断が速いのが特徴です。

快情動では刺激の対象に対して接近行動を、

不快情動では回避、攻撃、および固まる行動を起こすとされます。


例えば、危険が迫ることによって「不快」情動が生じたとすると、

扁桃体は、

視床下部を通じて、

交感神経系により、あるいはホルモンを分泌することにより、

心拍数や血圧を上昇させ、筋肉が素早く動けるように準備します。

また、脳幹を通じて、

咄嗟に、逃げたり、隠れたり、闘ったり、固まったりと、

反射的な行動を取らせる場合もあります。

(上図の左側半分の経路)


さらに、扁桃体には情動を記憶する機能もあります。

それは、次に同じような場面に遭遇した時、より正確に判断して、

生命を守る可能性を少しでも高めようとするためです。

そして、五感から新たに入ってきた刺激と、蓄えられている記憶とを照合し、

合致する記憶があれば、記憶と結びついている情動を呼び起こします


ただし、この記憶は断片的で短絡的なため、

起こった出来事に対して幅広く反応してしまうなど、

素早く判断できる分、誤判断をする場合もあります。


平常時は、古い脳である、扁桃体を含む大脳辺縁系は、

最も新しい脳である、次に説明する大脳新皮質の制御下にあります。

しかしながら、強い情動を生じるような、

特に個体および種の保存に反するような非常事態に際しては

上位の大脳新皮質の働きを抑制し、大脳辺縁系の本来の役割である、

より反射的・本能的な行動を起こして身を守ろうとします

例えば、目の前に突然、物が飛んで来た時や、

パニックになるほどの恐怖を感じた場合などです。



一方、大脳新皮質では、

扁桃体の素早い情動判断の影響を受けつつも、

外部からの刺激を、詳細に処理・分析すると共に、

知識や経験・記憶などと合わせて、理性的・総合的な判断を行います。

その分、処理には時間が掛かりますが、より正確になります


例えば、本当に危険なのか、危険であればどの程度なのか、

どちらに逃げれば、どの位の速さで逃げれば、より安全なのかなど。


大脳新皮質は、進化の過程により高等哺乳類で発達していますが、

特に人では際立って発達しています。

人を人たらしめているのは、正にこの部分の働きによるとも言えます。


見方を変えると、

扁桃体を含む大脳辺縁系を制御している大脳新皮質が、

人と比べて発達していない犬が、より反射的・本能的な行動を取るのは、

当たり前のことと言えると思います。


次回は、これらを踏まえた上で、

条件性情動反応についてお話したいと思います。


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タグ:学習理論(53)


●お断り

脳の神経回路、機能などについての研究は日進月歩のため、

昨日までの通説が翻ったり、新しい発見があったりします。

また、研究者や立場(医者、心理学者など)の違いによっても

見解は異なります。

さらには、脳の同じ部位でも、解剖学的・機能別・絶対的な位置によって

呼び方が変わったり、常識と思われる部分は省略されたりと、

本格的に学んでいない私にとってはかなりハードルが高いです。

このため、これからお話する条件性情動反応に近い事例の資料を元に、

神経回路図や記事の作成を行っていますが、

必ずしも正しいとは断言できませんので、予めご承知置きください。