いまさら、と思うかもしれない。


しかし、なぜか急にむしょうに見たくなるアニメがある。


それが「機動警察 パトレイバー」だ。


誤解のないようにはじめに言っとくが、わたしはマンガのほうはよんだことがない。


OVA時代も知らない。10数年前、ぷらっと立ち寄ったレンタルビデオ屋でなにげなく借りたうちの1本だった。


高校時代の友人にアニメオタクがいた。自分自身もかなりアニメには詳しいほうだと思っていたが、やつにはかなわなかった。


そいつの口からでた「パトレイバー」という耳慣れない単語が記憶の隅に残っていたのかもしれない。


内容もよく知らない、ファンでもないのに借りた理由は『ほんの暇つぶし』、それだけだった。


ぼうっとしながら見ていると、映画の最初のほうにロボットがでてきて多少の興味をそそられた。


マジンガーZ、ライディーン、そしてガンダムとロボットアニメで育ったものにとってはロボットものは格別なのだ。


しかーし、ストーリーが進むにつれて、それまで見てきたロボットアニメとは違うことに気がついた。


あまりロボット(この場合はレイバーという乗り物)が扱う事件が庶民的なのだ。


ストーリーは東京湾を埋立て地に配属された警視庁特殊車両(特車)二課を中心に進んでゆく。


レイバーなるロボットに似た乗り物が巷にあふれて産業(土木・建設を中心)に使用されている1999年の未来東京。


(映画が劇場で公開されたのが80年代後半なので)


レイバーを使った犯罪を撲滅するためにできた特車二課、パトロールレイバー隊、通称パトレイバーが活躍する話。


ストーリーについては省きます。


見終わった後の感想は、「これがアニメ?」だった。


アニメ=子供向けという概念はガンダムによって覆されていたけれど、それでもここまで大人の世界を見せるの?


というのが正直な気持ちだった。


緻密な設定、裏打ちされたストーリー、泥臭い人間関係、現代にも通じるコンピューター犯罪。


二足歩行のレイバー以外はあまりに現実的。


警察機構の内部事情、国家公務員という人独自の立場。


かならずしも正義が優先されるわけではない人間の損得。


ヒーローもの、ロボットものというより、ある種の人間ドラマに近いものだった。


警視庁の上下関係、出世にまつわる部分などドラマ・映画の「踊る大走査線」にも影響を与えているように思われる。


映画のパトレイバーをパトレイバーに詳しい友人に話をすると、


「映画は全然違うんですよ。マンガはギャグマンガですし」と言っていた。


結局、「パトレイバー2」も見て思ったのだが、映画は監督・押井守の色が強かったということなのだろうか。


押井守はハリウッド映画「マトリックスシリーズ」にも影響を与えたいわれるアニメ映画「攻殻機動隊」の監督である。


「マトリックス」監督のウォシャウスキー兄弟は「攻殻機動隊」の大ファンであった。


マトリックスにはいる際に首の後ろに差しこむケーブルのアイデアは「攻殻機動隊」でも使われている。


その後、押井守は「イノセンス」でハリウッドでも評価される。


ま、マンガ本と映画が違うのはマンガで慣れているファンにとってはとっつきにくいだろうが、


わたしはマンガをよんでいなかったためにすんなりと受け入れることができた。


監督・押井守の凄さもあるんだろうが、個人的には脚本の伊藤和典が素晴らしかった。


とにかく今見ても考えさせられる部分はあるし、コンピューター一色になった現代でも充分通用する内容である。


ちょっとした偶然の出会い、パトレイバーとわたしはそんなかんじだった。


しかし、これだけ夢中になるものに会わせてくれたのだから、ほんの暇つぶしも、まあわるくないものだ。