livedoor のブログ Happy Job Hunting からの転載です。

 

 

 

スコットランドに住むようになって初めての休暇があり、2週間休みになりました。

 

私はハイランド地方に旅行に行くことにしました。

 

なんといっても一番の観光地はスカイ島です。

 

お金がなかったので、ユースホステルに泊まり旅をしました。

 

でもユースホステルって夜も騒がしくてなかなか眠れないのですね。

 

最初の1週間が過ぎると疲れてきてしまい、友人に電話をしました。

 

明日行ってもいい

 

旅行中に泊まりに来るよう友人に誘われていたのです。(スカイ島とは逆方向だけど)

 

ユースホステルに嫌気がさした私は普通のうちに泊まりたくてそこに泊めてもらうことに。

 

そこはStonehaven という美しい村で、友人のうちは大きな農家のようなたたずまいでした。

 

大型犬が3匹と大きなオウムと野生化した猫2匹と12羽のニワトリと、孔雀とそのほかいろいろな動物が共存していました。

 

人間もしかり、入れ代わり立ち代わり友人たちが訪れてまるで動物園。

 

2日後には彼のお父さんも合流しました。

 

お父さんは物静かな紳士で、引退した歯医者さんだとか。

 

すぐに仲良くなりました。

 

お父さんは50年前に日本に来たことあるそうで、その時食べたすき焼きの味が忘れられないそうです。

 

私に作れるかと言われて作ることにしました。

 

Pはもし私がすき焼きを作るのなら、お客を呼んでディナーで一緒に食べようといいました。作れるよね?

う~ん。すき焼きには酒とすき焼き用の肉が必要だけど、手に入るのかな?

まずスーパーに行き、日本酒を探しましたが、全くないのです。4つくらい回ってやっと見つけました。

次は肉です。イギリスには塊肉はあっても薄切り肉はないのです。

肉屋に行き、牛肉を紙のように薄く切ってくださいと頼むと、”Impossible."「不可能だ」と言われました。

そこを何とかと頼むと、ベストを尽くそうといってくれてけど、できたのは紙どころか、かなり分厚い肉キレ。

あ~あ。

何とか材料を調達して準備を始めました。

ディナーは最初4人くらいのはずが6人に。

幸いにも彼のうちにはものすごい大きな鉄の鍋があり、ちょうどすき焼きに使えそうでした。

さんざん苦労した挙句に、すき焼きつくりにとりかかりました。

生卵につけて食べるというのが外国人には受け入れがたいらしい。新鮮な卵なら大丈夫だといったのだけお、それでも心配そう。

卵は新鮮なはずだ。なんせ庭で駆け回っているニワトリが今朝産んだ卵なんだから。

お客さんは彼の友達のカップルと女性一人、彼のお父さんと私と彼で6人。

彼の友達は兵隊でアフガニスタンとかイラクとか行っていたらしいが、奥さんが病気になったので国に帰り、献身的に世話をしているらしい。

脳のがんで、一時はかなり危なかったが最近持ち直したという。

奥さんは可愛い感じの女性で、夫に助けられてそろそろと歩いていた。痛みがあるのかもしれない。

彼女は「私はすき焼きを食べたことないの。楽しみだわ。」と言ってくれました。

やっとすき焼きが出来上がり、食堂のテーブルに運びました。みんな生卵については疑わしそうにしていたけど、わたしがお手本を見せると、その通りにして食べてくれました。

すき焼きは好評で、私は胸をなでおろしました。奥さんはお代わりをして食べてくれました。

お米も日本式のsticky riceというのを買ったので、かなり日本食に近くなりました。

彼のお父さんはとても喜んで、「これが日本で食べたすき焼きだ。50年ぶりに食べられてうれしい。」と言ってくれました。

たくさんあったすき焼きがあっという間になくなり、私も久しぶりに食べられてうれしかったです。

まさか自分がスコットランドに来てすき焼きを作るとは夢にも思いませんでした。人生何が起こるかわからないものです。

 

私にとっては大切な思い出です。あの時のメンバーはもう二人欠けてしまいました。

 

彼の友人の奥さんはしばらくして亡くなり、数年後に彼は再婚したそうです。

 

彼のお父さんはその後腎臓を悪くして、移植が必要になり、手術室に運ばれる前に言葉を交わしたのが最後になり、手術台の上で亡くなったそうです。

 

そう思うとあの出来事はもう2度とない素晴らしい機会だったのです。

 

人生におけるいろいろな出来事を私たちは簡単に見過ごしてしまいます。

 

もっと一瞬一瞬を大切に抱きしめて生きていくべきなのですよね。

 

少なくともこの二人は私のすき焼きを喜んでくれたのだと思うと、心があったかくなります。