10月27日から11月2日、1週間にわたり開催された忠武路映画祭の中で、『監督が監督に聞く』コーナーへ登場されました!
10月31日の新鮮な「動くヨンウニム」がご覧になれますよ~
司会:カン・ユンソン監督(『犯罪都市』の監督です)
【お話の内容を要約してお伝えしますね】
司会:『スピリットウォーカー』のモデレーターを拝命しました、カン・ユンソンです。
『スピリットウォーカー』のユン・ジェグン監督と俳優パク・ヨンウさんに拍手を。
監督:『スピリットウォーカー』を監督したユン・ジェグンです。
映画関係者が多いようですが、一般の観客の方もいらっしゃいますか?
みなさん、映画はご覧いただきましたか? ネタばれ、OKですね?
ヨンウニム:『スピリットウォーカー』でパク室長・・・でしたっけ?
ずいぶん前に撮影したので忘れてしまいました(笑)
本題に入る前に、数日前の事故(梨泰院)に遭われた方々の冥福をお祈り申し上げます。
司会:あの事故がありましたので、当イベントの開催をどうするかという話もでましたが、大騒ぎせず厳かに、進行したいと思います。
司会:この映画はいつ撮影されたものですか?
監督:2019年1月15日にクランクインし、夏にクランクアップしました。2019年末か2020年初に公開の予定でしたが、コロナのために2021年11月公開となりました。
司会:私たちは少し早く拝見したのですが、非常にうまく作られていると思いました。この複雑な設定を、よくもこんなにうまく表現したものだと驚きました。
監督:構想を固めた頃は、毎日昼間は図書館に通って、次に何をしようか悩んでいました。そんな状態なので、今夜寝て起きたら別人になっていたらどうだろう、明日起きたらパク・チャヌク監督になっていたらどうだろう、ってね。その一方で自分は何者なんだという哲学的な質問にもつかまっていた時期でした。自分というのは肉体なのか魂なのか、そんなことをですね。
司会:構想からシナリオ完成まで、どのくらいの時間がかかりましたか?
監督:シナリオは案外早く書けたんです。でも、どこへ持っていっても採用してもらえなかったんです。あまりに哲学的にすぎるとか言われて。3~4年かけて自分が知っているあらゆる制作会社に持っていったんですが断られまして。最後に訪問したこちらの会社で、今度はめちゃくちゃ気に入ってもらって、映画化が実現しました。
司会:ヨンウさんはどうでしたか? この複雑なシナリオは、すぐに気に入ってOKするような内容ではないでしょう。最初に読んだときどう思われたか、また、引き受けたきっかけなど教えてください。
ヨンウニム:個人的に「霊魂」というものに強い関心があります。それから、シナリオには注記がいっぱいついていて、簡単には理解できそうになかったので監督を訪ねていきました。監督にお会いして、非常に誠実な方だと、信頼していいと思いました。この方と一緒にやれば、少なくても「誠実な映画」ができるのは間違いないと思えました。
監督:キャスティングに苦労したんですよ。シナリオをじっくり読み込んで来られて、とても長い時間をかけて会話するのですが、引き受けてくださるのかくださらないのか、わからないんですよ。ひと月ぐらいかかりましたね。
司会:この映画は、キャスティングも難しかったというのがよくわかりますし、制作会社をみつけるのに苦労したというのも非常によくわかります。
監督:哲学的なテーマを含みながらも商業性のある面白い映画にしたかったですね。テーマと商業性の接点を探しながら撮影しました。
司会:ヨンウさん、『オルガミ』のシャワーシーンはいまだに忘れられません。『甘殺』も印象的でした。今回は悪役ですが、悪役をやってみたいという渇望のようなものはありましたか?
ヨンウニム:年とともに考え方も変わってきたのですが、最近は悪役の魅力に惹かれています。自分がアクションを仕掛ける主役よりも、相手のアクションを受けてリアクションする脇役に関心が強いです。本作ではユン・ゲサンさんと呼吸を合わせてリアクションするのがとても楽しかったです。
司会:俳優さんは経験を積めば積むほど同じようなことをおっしゃいますね。チェ・ミンスさんからも聞いたことがあります。
ヨンウニム:『別れる決心』でも悪役を演じました。
司会:悪役にもいろいろありますが、役作りは監督と相談しましたか? 自分で考えましたか? モデルはありましたか?
ヨンウニム:ユン監督は役者を自由に解き放ってくださるスタイルで、ありがたかったです。典型的な枠にはめるようなことはせず、自由にやらせていただきました。『ノーカントリー』とか『レオン』とか、悪役の教科書的な存在があって頭に残像として残っていて、それらを完璧に砕いてしまうことはできませんが、リアクションに集中して演技すると、独自性のあるキャラクターになると思います。
司会:本作を見て「パク・ヨンウの再発見だ」と思いましたね。肩に力が入らず、非常に自然に悪役を演じていらっしゃいました。とても個性的なストーリーなのに、役者の顔がしっかりと見えてもいましたね。
監督:ありがたいことに、演技派の役者がそろいました。もともと演技派の役者たちなのに、自分たちで練習の場を設けて撮影前に熱心に練習してくださっていたんです。こんなことは初めてでしたね。誰に命じられたわけでもないのに自主的に研究してくださったんです。なので演技についてはまったく心配しませんでした。
監督:カン監督もよくご存じのとおり、役者の中にはシナリオ全体を読みもせず、自分の役のところだけ読んで自分のシーンが終わったらさっさと帰ってしまう、そういう役者も少なくないんですよね。そんな中で、本作に出演してくださった役者さんたちは全体を理解して、全体の中での自分の役割をよく理解して演じてくださいました。
司会:話が行ったり来たりで申し訳ないのですが、続いてはエンディングシーンについてお尋ねしてもよいですか? 韓国映画ではめったに見ないアクションシーンでしたね。ヨンウさんはアクションシーンの演技派これまでそれほど多くなかったと思うのですが。
ヨンウニム:当初の予定ではもっとテクニックを要求されるアクションシーンが描かれていたのですが、準備時間も足りないので「感情的なアクション」にしようということになりました。
監督:最後の場面でユン・ゲサンさんとパク・ヨンウさんのアクションシーンですが、本来はもっと長かったんですが、その前のアクションシーンが結構長くてですね、すぐにOKが出ずに20テイクほどにもなってくると役者が疲れ切ってしまうんですね。
司会:アクションシーンを20テイクもやり直すんですか? ひどい監督ですね。
監督:ゲサンさんも納得がいくまで撮りたいという人なんですけど、20テイクすぎたあたりでゲサンさんが「もうできない」と言って来ましてね。彼がもうできないというぐらいだから止めるしかないと思ってその日の撮影は終了しました。その夜、PDから電話がかかってきて、「ゲサンさんの肋骨にひびが入った」って言うんです。翌日、ゲサンさんが負傷でアクションできない状態でどうやって撮影しようか悩んでいたらゲサンさんがやってきて、「昨日のシーンをもう一度撮りましょう」って言ったんです。肋骨にひびが入った状態でどうやって撮影するのかと聞くと、鎮痛剤を飲んできたから効き目が切れる前に撮影を終わらせましょうって言うんですよ。そんなふうに撮影しました。
司会:ヨンウさんはジャンルものがお好きでしょう? ジャンルものにたくさん出演していらっしゃいますよね?
ヨンウニム:『甘殺』の印象が強くてジャンルもの俳優と思われているようですが、『甘殺』も『スピリットウォーカー』もジャンルものだと思って参加したわけではありません。
司会:とてもいい映画なのに興行成績はいまひとつでしたね。
監督:時期が悪かったですね。
司会:映画に参加した人たちと今でも集まったりしますか?
ヨンウニム:はい、グループチャットでまめに連絡を取り合っています。
監督:とても信頼できる撮影監督との協同だったのもよかったです。
司会:トイレでゲサンさんとヨンウさんが入れ替わるシーンがとくに印象的でしたね。表現の仕方がとてもうまい。
監督:あのトイレのシーンはテイクを分けたくなかったので、「1テイクで撮影してくれ」と撮影監督に言いました。その一言で、撮影方法などは撮影監督にお任せしました。
司会:この映画の中で、このシーンではユン・ゲサンがパク・ヨンウになっている、というのは説明が難しいですよね。なのにとても上手に鏡やガラス窓を使って観客が混乱しないように表現されていましたね。
監督:観客が混乱しないように気を遣いましたね。最終的にはいくつかルールができたのですが、最初はどちらも見せたら観客が理解しやすいか、わからなかったので、両方撮影したんです。同じ演技をゲサンさんで撮り、ヨンウさんで撮って、つまり同じシーンを俳優を交代させて2回ずつ撮影したんです。
司会:情熱を注いで撮影された作品ではありますが、残念に思う点、もうちょっとこうしていたらと思うような点はありますか?
ヨンウニム:もしまた今回のように、霊魂がいろんな人の体の中を移動していくような役柄を演じるとしたら、今度は霊魂が完全に入れ替わるのではなく、霊魂の人格と肉体の所有者の思考が半分ずつ混ざり合うような、そんな演技もしてみたいです。
監督:私がこの映画に望んだのは、観客がユン・ゲサンに感情移入して観てもらえる作品に仕上げることでした。
司会:パク・ヨンウの演技力ならもう少し凝縮した演技ができたのではないかと感じるところがありました。ヨンウさん自身はいかがですか?
ヨンウニム:編集でカットされたシーンはやはり残念ですね。
監督:悪役の役作りは本当に難しいんです。悪役が魅力的であってこそ映画が光るんです。なので、パク室長をどんな人物にするか、ヨンウさんとかなり話し合いました。
ヨンウニム:削除されたシーンの中にパク室長がジナをつかまえて蛇のようにしつこく、いやらしく、残忍に締め上げるシーンがありました。個人的には気に入っていたシーンなのですが。
司会:SNSが発達して、観客が作品に対して自由に意見を述べるようになったために、監督の立場としてはどうしても批判を避けようとしてしまいます。暴力的なシーンや性差別と取られるような場面はできるだけカットしてしまうのが最近の韓国映画の現状です。
監督:同感です。映画の中ではそのようなシーンも表現の自由として寛容に受け止めてもらえるといいのですが。
ヨンウニム:カン監督の次の作品で私をそのような役に使ってください。(笑)
監督:自分たち自身で検閲しちゃうんですよね。中途半端な作品になってしまいますね。
司会:そういう意味では今年9月に封切られた『狼狩り』には驚きましたね。勇気のある監督だ、韓国でもこんな映画が作れるんだと。
監督:好き嫌いが分かれても、思ったとおりに作品を作れる時代がきてほしいです。
司会:ヨンウさんは今後どんな役を演じたいですか?
ヨンウニム:物理的に他人に恐怖を覚えさせる役も魅力的ですが、それ以上に、心理的に人に恐怖を与えたり苦悩させたりする役割に関心があります。『バスターズ』(とおっしゃっているように聞こえますが・・・)に出てくる悪役に魅力を感じますね。とくに力が強いわけでなく物理的に圧迫するわけではないのですが心理的に追い詰めるんです。
司会:ご質問を受けようと思います。いかがですか。
観客1:ユン・ゲサン氏をキャスティングされた理由を聞かせてください。
監督:努力を惜しまない、出し惜しみしない役者だという評判を聞いていました。幽体離脱して他人に成り代わる役ですから、あまりに個性が強すぎる役者では合わないと思っていましたし、当時ゲサンさんはまだ今ほどの大スターではなかったので適任だと思いました。
ヨンウニム:私はなぜ選ばれたのですか?
監督:『オルガミ』のときからファンでした。いつか一緒に仕事したいとずっと思っていて、パク室長の配役を考えたときに思い至りました。
ヨンウニム:次回作でもぜひ読んでください。
観客2:削除シーンを見たいのですが。
監督:興行成績がよかったら、DVDは特別バージョンにして削除シーンも全部入れて販売したいと思っていたのですが、時期が悪くて成績が伸びなかったので断念しました。
ヨンウニム:後日、私がいろいろな作品の削除シーンを集めて、必ずお見せします。
観客3:お二人の監督に質問します。もう映画を止めよう、と思ったことがおありでしたらどのように克服されたか教えてください。
司会:どうにもならない期間が私にもありました。別の商売をして儲けた金が呼び水になってうまく回り出しました。運がよかったですね。ときには放棄することも必要です。
監督:小学生の頃から映画監督になるのが夢でしたが、40を過ぎてやっとデビューできました。とても遅いですよね。私は、「現実的な決断」ができない性格で、漠然とした自信だけでやってきたように思います。運がよかったから好きなことを続けていられてますが、「夢を持ち続けていれば叶う」というようなことは言ってあげられません。
ヨンウニム:監督はただ運がよかっただけのようにおっしゃいましたが、じつはすごい努力家で、業界の仲間のことを考えて熱心に活動しておられる素晴らしい方です。夢は、それを持っているだけで幸せなものではありませんか?
観客4:とくに印象の強かったシーンを教えてください。
ヨンウニム:これほどストレスなく撮影した作品はなかったように思います。撮影に行くのに遠足に行く気分でした。これまでは自分の満足度と作品の完成度のシンクロ率がよくなかったのですが、この作品では非常に高い確率でシンクロできたと思っています。なのですべてのシーンで満足しています。
司会:映像ですべてが説明されている、優れた作品だと思います。本日はありがとうございました。