お待たせしてしまって申し訳ありません!!!
2016年3月号の CELEBRITY 、 しっかり持ち帰って参りましたですよっ
あの人の名前は、リチャード・ディーン・アンダーソンとか言ったはず。今でも覚えている。なんでも自分で作ってしまい、力もすごく強いんだ。頭も良くてセクシーで、女性にもモテる。最高だった。
成長期には、男性も女性も誰かに認められたいと願う。トップに立ちたいという熱望が最高潮になる時期だ。欲望の膨らむ時期が、すなわち思春期と言えるのではないか。マクガイバーもヒーローの一人だ。
俳優になったばかりの頃、どんな俳優になればいいのかわからなかった。
自分がどんな風に見えるのか、鏡を見てもわからなかった。どんなカラーの役者なのかもわからなかった。
当時は 『砂時計』や『黎明の瞳』でチェ・ジェソン先輩やチェ・ムソン先輩のようなタフガイにスポットライトが集中していた時期だった。だから劣等感もつのって挫折を覚えた。
そんな頃、ヤン・ジョウィの出ている映画を見たんだ。
「あれ? 俺がどうしてあんなところに?」と思った(笑)
顔が似ているとかではなく、猫背気味で矮小な、何とも言えない感覚のせいだ。
あのときは、ヤン・ジョウィがそんなに深い俳優だとも知らず、漠然と「俺もあんなふうにやればいいんだ」と思った。なのにいまだにチャンスがない(笑)
大学時代、先輩や同期から、俺に似た俳優がいるという話を聞いて探してみたんだ。みつけたけど、あまり男前でもないし、実のところあまり気分はよくなかった(笑)
ところが、彼のデビュー作 『真実の行方』 を見たら、演技がめちゃくちゃ上手い。そこから好きになったね。
個人的に、人には二面性があると思っているから、二面的な感じが好きだ。
映画は、ファンタジーを見せるのも大切だけど、「人が生きていく中で本質的なものを見せる方法でもある」と思った。そういう方向にいる俳優が俺には相応しいし、エドワード・ノートンもそんな一人だと思うよ。
(最期の1枚は、こんなふうに↓↓↓ 他の3枚とはサイズがまるで違うんです by ハギ)
映画 『純情』 では、ラジオの生放送中に届く過去からの手紙を通して、現在と過去を行き来するDJヒョンジュン役を演じた。
『純情』 は回想と追憶に関する物語だ。単純に、「あの頃はよかった」と話すのではなく、人は追憶によって成長することを見せてくれる映画だ。
ト・ギョンスの未来を演じた。自分の過去がト・ギョンスだと聞いたときの気分は?
最初は、この役を引き受けるのが負担に感じられて断った。シナリオを読んだときに感じた真っ青な感覚を、すっくり表現できない気がしたからだ。ところが監督が訪ねてきた。監督と長い間話し合って、監督から勇気をもらい、決心した。
ト・ギョンスをはじめとする若い役者たちとよく話し合ったか?
物理的なシステムのせいで一緒に過ごす時間は少なかったが、話をしていると「ただ思い通りに生きていけるといいな」と思った。「違う」これはこういうふうにやらないといけない、なんて話したところで何の役にも立たないし、正解でもない。自分自身の人生にとても素直だという印象を受けたが、そういうところ、ずっと変わらないでほしいと思う。浮き沈みもあるだろうし、いろんなことがこの先に待っているだろうけど、ひたすらありのまま、正直に生きてほしいと感じた。
後輩たちにアドバイスをするスタイルではなく、黙って聞いてあげる性格のようだ。
大きな目標のうちの一つが、「扱いにくい年寄りにはならずにおこう」だ。そうならないためには、口数が多すぎてはいけないし、けちであってはならない。以前に比べると口数が増えてきたと思うが、状況を見て話すのをやめる。しかし、後輩たちとの会話が世俗的だと思えたときは口を挟んでしまう。
俳優という職業でいると、映画を観てもリラックスして楽しめないのでは?
だから早く、もっとたくさん演じなければいけない。演技が楽しくてたまらないんだ。そういう時期ってあるみたいだ。2、3年前から、演じるのがとても楽しい。
その前は楽しいばかりではなかったと?
感謝することを知らず、人気とは無関係に、忙しいとイライラし煩わしいと思った。だけど、そういう過程があってこそ、成長し成熟していくのだろう。
今はどんな役を演じたい?
最近、スピルバーグ監督の 『ブリッジ・オブ・スパイ』 を見た。ああいう作品と役をやれたら本当にいいなと思う。人が生きていくうえで大切にしなければいけない<信念>について語っている作品だ。友達に、「おまえはいいよ。好きなことやって生きてるんだから」ってよく言われるけど、この世界も浮き沈みが激しい。なのに人は漠然と、文化産業に関連する仕事は全部、やりたくてやってることで、それ以外の仕事はやりたくないことをやっていると思うみたいだ。だけどそれは単なるイメージにすぎない。自分の働く理由がはっきりわかっていて自分の中心を持って生きることが大切なんだ。職業観、家族観、愛情観とか、自分の信念についての意味を見つけ出せる役を演じられたらそれ以上望むことはない。
それは、内面の演技を重要視する作品をやりたいということ?
この年になったから、ある程度のことは経験してきたって言えるよね。そういうものを軽々しくではなく、真摯に表現できるといいなぁ。そろそろできそうじゃない?
40代だ。今まで経験してきた20代、30代、40代の違いは?
20代よりは30代、30代よりは40代のほうがどうしてもしわが増える。そういう部分に照らして自分の価値観もつい隠したり変えようとしたりしてしまう。だけど経験上、そういう時ほど変えちゃだめなんだ。特にこの業界の人たちは価値観が変わってしまうと本心を表現することができなくなるから、変わっちゃいけない。一言でいえば、ピーターパンになってこそ、本心を歪曲せずに現実がひんまがっているんだってことを果敢に表現できる。そうすれば、もう少し幸せになれるのじゃないだろうか。
ピーターパンとして生きるためにしなければならないことは?
できる限り恐怖心を捨てる。と言いながら、かく言う僕もひどい怖がりだ。とてつもない恐怖心が襲ってきて一日中憂鬱でわんわん泣くこともある。恐怖なんて少ない方がいい。怖がってみたところで解決できないことがほとんどだって、誰だって知ってる。 『ブリッジ・オブ・スパイ』 には、Would it help? っていうセリフが何度も出てくる。「心配したところでなんの役にも立つのか」っていう意味だ。人は恐怖心のためにやるべきことを先延ばしにし、「俺だってあんなふうになれたのに」とつぶやく。少しでも恐怖を減らすことができればそんな言い訳も減るだろうに。僕も毎日反省しているんだ。だけどすごく怖い。
あなたのコンプレックスは?
俳優になりたての頃のコンプレックスのひとつは、あまりに消極的で脆かったことだ。人に対するときも、視線がおどおどしていて、常に下を向いて過ごしていた。 『地球村 世界旅行』 という番組でニュージーランドへ行って、ハカダンスという原住民のダンスを踊った。韓国でいえばテコンドーのようなもので機先を制するために目を丸く見開き舌を長く伸ばして踊る戦士の踊りだ。当時の自分のコンプレックスに対する新鮮な刺激だった。
コンプレックスは演技を通して克服したのか? 歳月とともに自然となくなったのか?
いまだに克服できずにいる。今でもそういう面は残っている。
外から見ていると誰もそんなふうには思わないだろう。
いや。僕ってたいがい可哀想なやつだよ(笑) 自分を見てると、とても情けないし、憐みさえ感じるね。憐れで不幸で抱きしめてやりたくなる。時々、自分自身を慰めてるよ。「おまえはじつに情けなくてイライラするよ。どうしたらいい?」ってね。
これまで演じた役の中で自分にそっくりなキャラクターは?
ドキュメンタリーでない以上、そっくりなんてあり得ないが、その時々の自分の姿が反映されているはず。
過去の作品を観たりする? 自分の出演した作品はほとんど見ないと聞いたが。
見ない。後悔して失望しそうだから。よく、照れくさいって言う人がいるけど、たぶんそんな気持ちが内在しているんだろう。もっと成長したいって思う本能だよ。忘れたいっていうのもある。
ヤン・ジョウィが家に一人でいるときの感覚があなたと似ているという。
本能的なもの。キーワードは寂しさ(孤独)。幼い時からそんな人生を生きてきた。
寂しんぼう?
寂しさを感じるというより、なぜか一人になりやすい。自分でも知らないうちに、そういう状況になる。気質のようなものがあるんだろうな。だからすぐにそうなりやすい。
過去のものを大切に収集する人もいれば周期的に捨てる人もいる。どちらのタイプ?
未練だと言われるほどに捨てないたちだったが、最近は捨てようと努力している。
なにかきっかけが?
執着だってわかった。執着って、いいものじゃない。信念があるのはいいが、すぎると役立たずなこだわりになる。それって気を付けないと危ないぞっていう次元で捨ててはいる(笑)
それでも、捨てない性格を一気に変えるのは簡単ではないだろう? 捨てられないものは?
初めて買った青色のDAVIDOFFの香水のビン。空っぽのままずっと持ってる。昔のジッポのライターも持ってるし、捨てられないものはじつにたくさんある。
過去を思い出すとき、過去の映画にのめりこんで憂鬱になる人もいれば楽しみながら思い出す人もいる。どちらのタイプか?
両方。過去より追憶という言葉でそういう感情を思い出したい。追憶と過去は違うと思う。過去というのは僕には少々否定的な言葉だ。過去と言われて思い浮かぶのは<後悔>と<自慢>だが、追憶には成長する感覚がある。追憶とは、過去を通して満足げな、温かなものを感じながら「そうだ、あれだけ苦しんだからこそ今の成長があるんだ」という感覚。そういう意味で追憶は回想とおなじ脈絡にある。だけど大部分の人は過去を思いながら「俺は昔こうだった」と自慢したり、「あの時あの人とつきあって結婚すればよかった」と後悔する。そんな時はあの答えがピッタリだ。 Would it help?(笑)