りなさんが一人、縄文杉を目指して山を登ります。
鳥の声、枯葉を踏む音。。。
ヨンウさん、私は今、屋久島の森を歩いています。
帰り道で、私は苦しんでいる日本を見ました。
地震で消えてしまった故郷と、家族を失くした人たちを目にしました。
私は、この古い森に来て、「大丈夫、がんばって」という言葉を聞きたかったのです。
そして、あなたに、あの時見せられなかった、この森のことを伝えたかったのです。
三千年も生きてきて、今は切り株だけが残っている、この樹の美しい窓を見せてあげたかったのです。
年の差千年、手をつないで五百年が経った夫婦杉や、
雪の中でくぐった三代杉を、ビデオで撮影しながら歩くりなさん。
覚えていますか?
私たちはあの冬、それ以上行けなくて、戻らなければいけなかったその道を
私は今、登っています。
秘密めいた霧に包まれた森が、私を迎えてくれます。
森とのお別れの時、私たちは、笑いながらこう言いましたよね。
「森の木々は私たちより長く生きるから。いつでも待っていてくれるから」って。
「そんなことを考えると、力が湧いてくるのだ」と。
私は、最後の登り道を登っています。
7200年の間、この森で生きてきた賢者、縄文杉に、もうすぐ会えます。
「こんにちは。やっと会えました。やっと辿りつきました」
賢者の無言の返事を、あなたに伝えたいのです。
りなさんからのメッセージを通して、縄文杉の森を一緒に感じるニム。
森は
土と樹々をかかえて
沈黙しつつ 生きている
人は その森に帰る
森は
ひとつの大きな闇であり
慈悲である
人は そこに帰る
森のそこには
水が流れている
その水もまた 森である
人は そこに帰る その森に帰る
-森について- 山尾三省
ヨンウさん、
これからも健康にお気をつけて
またお会いした際には、日本酒で乾杯しましょうね。
秋、古い杉の森から 高木りな