『ビューティフル サンデー』 のときは、Movie Week の Cover Story に2度も登場されたようで・・・
もうひとつの記事がこちらです^^
白黒写真だと、またガラッと印象が変わりますね~
日差しの下でも笑わない、その男
パク・ヨンウ<ビューティフル サンデー>
パク・ヨンウは最近病んでいる。愛について悩んでいるのだ。恋愛が、現在進行形だからというわけではない。
『ビューティフル サンデー』が残した、一種の後遺症のせいだ。
”殺しても足りないようなろくでなしの愛” なんて言葉が自然と浮かんでくるような熾烈な愛。
そんな愛のために自ら破滅を呼び込んでしまったカン刑事を演じ、
パク・ヨンウは、終わりの見えない切々とした思いを味わった。
”切々たる恋愛をしたことがあるかって? この年になって経験がないなんて、あり得ないでしょう。
自分が経験した恋愛は、当人にとってはどれも一番切々たる恋愛ですよ。
『ビューティフル サンデー』 を撮りながら、愛にについて考えさせられました。
恋愛は人を幸せにもできるけど、悲惨な状態に追い込むこともあるんだなって・・・”
ほんわかとした温もりを感じさせる男が変身した。
口からは汚い罵声をとばし、退廃的な行動にためらいもしない。
常に端正でこざっぱりとした身なりをしていた彼が、これ以上ないほどのボロを身にまとっている。
どうしたらこんなに変われるのか。
どれほど愛にのめり込めば、こんなふうになるのか。
愛が人を変えてしまった。
愛が、パク・ヨンウを変えてしまった。
血を呼ぶ壮絶な愛の物語 『ビューティフル サンデー』 で、パク・ヨンウは陰鬱この上ないカン刑事を演じ、これまで我々が持っていた ’パク・ヨンウ’ というイメージを徹底的に破壊した。
「ほんわかとした映画が好きでした。ヒューマニストなところがありますから。だけど、人間は夢ばかり追いかけていると現実を見ることができないでしょう。『ビューティフル サンデー』 は恋愛の現実的な問題を取り扱った映画です。現実をほじくれば、痛みを伴います。でも、それを何度も繰り返せば、傷と同じで免疫が生まれるんじゃないでしょうか」
恋愛という ’現実’ を語るということ。その点に惹かれてパク・ヨンウは 『ビューティフル サンデー』 を選んだ。
これまでにも、恋愛をテーマにした映画はたくさんあったが、恋愛によって生まれる現実的な問題を扱った作品はほとんどなかったように思う。
それがために、『ビューティフル サンデー』 は難しい映画だ。
パク・ヨンウが演じるカン刑事は、愛する妻が植物人間になってしまうと、麻薬組織と結託する。
治療費を捻出するために麻薬を隠し、平気で嘘をつき、暴力をふるうことにもためらいをみせない。
実に悪い男だ。
興味深いのは、それにも拘わらず、映画が彼の愛を新派劇のそれのように美化せず、だからといって暗いと非難することもないのだ。
「観客ははっきりと勧善懲悪の見える映画を好みます。だけど 『ビューティフル サンデー』 にはそういう勧善懲悪の枠がありません。新たな方向性を開拓する映画が出てこなきゃいけないのじゃないかって、常にいろいろ考えていたところへ 『ビューティフル サンデー』 がちょうどそんな作品だったんです。だから決めました」
彼の言葉を素直に書けば、「まだ本当の熱さをしらないせいか」 パク・ヨンウは、依然として興行成績にさほど期待していない。
これまでにも、思い通りになった映画などないからだ。
期待した作品ほど、興行成績は伸びなかった。
しかし、皆が止めておけと忠告した作品、例えば 『甘く、殺伐とした恋人』 は、いわゆる ’ヒット作’ となった。
経験を通じてパク・ヨンウは、一種の教訓を身に着けた。
興行成績に対する勘より、俳優としての勘を信じる方がよい、ということだ。
「『ビューティフル サンデー』 にかける期待は内的な部分です。僕なりには(これまでと違う)演技スタイルに挑戦したと思っています。それに対する評価を期待しています」
意外にも現実の彼を苦しめているのは、興行成績に対する負担感ではなく、映画が残した後遺症だ。
「最近、恋愛について考えます。 『ビューティフル サンデー』 をやりながら、自分でも知らないうちに胸が痛み、重苦しく、辛くなってくる・・・。次はロマンチック・コメディーをやろうと思うほどです。温かなラブ・ロマンスを演じたいですね。最近辛くて、本当に」
13年前に放送局の公採タレントとして演技を始めて以来、変わることなく彼を走らせてきた力は、演技に対する欲望だった。演技に対する不安、ひとつのキャラクターに染まってしまいたくないという不安は、多様なキャラクターを演じたいという欲望を抱かせ、その結果、今のパク・ヨンウが存在する。
数十本のフィルモグラフィーの中で彼は、観客が気づこうが気づくまいが、絶え間ない変身を試みてきた。
『ビューティフル サンデー』 は、そんな変身の頂点ともいえる作品だ。
「ふわふわと柔らかく角のないイメージは抑えていく時期にきているのではないか、深みを増さなければならないのでは、と最近は悩んでいます。僕は結果より過程を重視する人間です。そうすることで息の長い俳優になれると思うからです。
今、望むことは・・・
思いつきで言うのですが、もう少し年を取りたいということ。
前よりは成熟したような気もしますが、もう少し、熟したいと思うのです」
その言葉に、思わず頭を上げて彼を見ると、何とも言えない表情を口元にためているパク・ヨンウの顔が飛び込んできた。
午後の温かな日差しの下で、この男は熟してゆく。
(訳文文責:ハギ)