特典ディスクの中の Chapter 3 は・・・
【1808年 朝鮮(王朝時代), 連続殺人事件】
Production
企画段階、シナリオ作業から・・・
この作品はイ・ウォンジェ作家のアイデアから始まりました。最初は「血雨」というタイトルで、朝鮮王朝時代の田舎町で起こった連続殺人事件を止めようとする暗行御使(アメンオサ:王の特命を受けて地方官の不正を調べる調査官)のストーリーだったものに、田舎町ではなく孤立した島にしてはどうか? ありふれた町ではなく、製紙業で町の収益を確保する、近代工場のハシリのような設定にしたら面白いのじゃないか? そんな意見をみなで出し合って作り上げていきました。
ロケ地探し・・・
民俗村などでは離れ島の港町という雰囲気は出せず、思い通りのロケ地を探すのにとても苦労しました。良さそうなところには人が住んでいますし。
やっと見つけた麗水の一画を、それこそ干拓といえるほどの作業までして村を作りました。
俳優のキャスティングについて・・・
ウォンギュとイングォンは激しく対立する役ですから、お互いにできるだけイメージの違う役者がいいと考えました。
逆に、イングォンとトゥホは、一方が最後の告発者であり一方が犯人という設定ですから、最初から似ている方がいいと思いました。この、よくにたキャラクターはお互いに違った方法で「復讐」を果たそうとするのです。
この二人が入れ替わったとしても(お互いの役を反対に演じたとしても)大きな違いはなかったと思っています。
そんな、よく似た二人がそれぞれに全く違う道に進んでゆくところが面白いのではないか、と。
「良い俳優というのは、ただそう呼ばれるだけではなくて、本当に素晴らしいのです。常にいくつか他のカードを持っているし、自分なりの計画を持っていて、それを監督の希望に合わせて出してくる。今でもこの作品の出演者たちを思い出すと、非常に感謝しているし尊敬しています。涙が出るほどに」-キム・デスン監督-
追走シーン・・・
限られた狭い空間で撮影されたシーンでした。スピード感も必要だし、落馬するシーンも出てくるという、危険も伴う撮影。アクション監督の手腕が問われた名場面です。
残虐なシーンについて・・・
商業的な効果を考えて撮ったのではないことを、繰り返し申し上げたい。
犯人の立場に立って考えれば、愛する女性の家族だけでなく、彼女までも惨殺されて失った限りなく大きな失望の中で復讐を企んだのですから、じわじわと、密告者が苦しむ姿を目に焼き付けるようにして殺すだろうと思ったのです。。。
最初のカン客主の処刑シーンについては、ウォンギュの持っている父親に対するトラウマを可視化するためにも、リアルでないといけないと思いました。
Art
この映画は、1週間という時間に起こった出来事を扱いながら、一方で人の一生を扱っていると思うのです。ウォンギュが島にやってきた時と、島から去る時では、たった1週間経っただけなのに、彼自身が、血も肉もすっかり老いてしまったはずだと考えました。
また、楽しい、美しいと思って参加したカーニバルが、実は狂人的な祭りだったという衝撃を、濃い色を通して表し、最後の血の涙で、それまでの自分のすべて、人生のすべてが溶けて流れてしまうのを表現しようと思いました。
左はイングォンのイメージです。自分の内面のエネルギーがひっきりなしに爆発しようとするのを抑えに抑え続けて、ついには自分自身が消滅してしまう、そんな人物です。
右は映画の冒頭で登場する祭壇のデザインです。実際に祭祀が行われる際には5色の布が使われるのですが、赤を強調することで、最後の血の涙とつながります。残忍な美しさが表現できればと考えました。
Costume
コンセプト・・・
衣装はそれぞれのキャラクターの人生が詰まったものにしてほしいという要求がキム監督からありました。当時の人は服と言っても1枚きりしか持たないものをずうっと着続けるわけですから、そこに人生が染み出すというか、それを表現するのが難しかったのですが、スタッフはみなよくやってくれました。
紙の衣装・・・
よく見ていただくと、襟をはじめあちこちにびっしりと文字が書かれています。お札の意味もあるのです。(ほほ、耳なし芳一みたい・・・by.ハギ)
ボリュームを出すために5重、9重の部分もあり、すぐに破れたりして大変でした。
キャラクター別衣装イメージ・・・
イングォンは強烈かつ美しいイメージ。最初は優柔なイメージから、だんだんと強さが出てくるように気を使いました。
村人たちは茶系、外からやってきた部外者は青系を使った衣装にし、視覚的にもその対立を表しました。
時代劇の衣装は脱ぎ着が大変なので、一度衣装を身につけると一連のシーンの撮影を終えるまで着たまま待機するのが一般的ですが、あまりに暑い季節だったので、スタッフたちは撮影の合間合間に衣装を脱がせてあげ、冷やしたタオルを渡してあげるなどの誠意をみせて対応しました。
Make up
既存の時代劇にはなかったメイク、なかったカラーを要求されました。
髭のデザインも、ひとりひとり表現したいイメージを考えてそれを強調するように作りました。
イングォンは、それまでに見せたことのない「強さ」を見せるために、目を強調しました。
Special Art
不気味な惨殺死体の映像ばかりなので割愛します^^;
制作陣がいかに本物らしく作るか、相当苦労されたのはわかりますが・・・
C.G.
C.G.だとバレないことに重点を置き、「今回のC.G.は素晴らしかったね」と言われるのではなく、「どこにC.G.を使ったの?」って言われることを目標にしました。