「もしもし」


キーホルダーの多い携帯を持ち上げ、叫びを上げる携帯に出た。

ボタンを押せば、直ぐに耳に声が広がる。

携帯の画面に出ていた名前の子の声だ。


「もしもし」


私も声に声を返す。

私は、この子を友達だと思っている。


いや、思っていた。


「明日の事なんだけど……」


話は、明日の事の話だった。

私は普通に受け答えを返す。


表情は、浮かないまま。


なだらかな声が、何も知らずに音を奏でる。

重たいキーホルダーが、カチャカチャと心を騒がすように、金属音を響かせた。




私は、この子を友達と思っていた。

でも、その子は私を裏切った。


裏切ったつもりなどは毛頭ないだろう。

きっかけは、ほんの些細な事なのだ。


ただ、私に作った日記サイトを教えなかった。


ただ、それだけ。



だけど私の心は傷付いた。

親友まではいかなくとも、気兼ねなく離せる子だと思っていたのに。


私に秘密を作るなんて。





「じゃ、そういうことで」

「うん、分かった」


会話が終わる。

私は呼ばれているからといって、早々に電話を切った。


携帯が切れる。

耳に届くのは、無音。

それと、わざつくキーホルダーの音。






今日は、親友だと思っていた子の日記に、私の知っている人と二人で出かけていると書かれていた。


胸がざわつく。

頭が痛い。

また裏切られた。



「しにたい」


私は何も無い自室で、ポツリと声を吐いた。

思いは誰にも届く事無く、吸うだけの空気に溶けていった。





キーホルダーが、揺れ動く。

胸の鼓動のように。

ブログを始めた。

理由は、昨日親友を失ったからだ。


ざーざーと、雨が降っていた暗闇の中。

私は、親友を失った。

決して、親友が死んだ、引っ越した、そんな話ではない。


私がその子を親友と思えなくなった。


ただ、それだけだ。




理由は敢えて伏せよう。

ただ、一言。

私は親友を失ったのだ。


今までずっと、いや、期間にして一年間。

私はその子だけを一番として生きてきた。


遅刻しても笑顔で許した。

ドタキャンされても嫌な言葉一つ吐かなかった。

メールが遅くても、怒りはしなかった。


だけも、もう駄目だ。

私にだって、限界はある。







その子はいい子。

とても、いい子だ。





でも。


私の中では、もう、【友達】だ。








だが。

どうせすぐ、彼女は私の【親友】という枠に戻ってくるだろう。


彼女はとても残酷で、とても、優しいのだから。


私がメールを返せば、直ぐに、私の欲しい言葉をくれるのだ。















あぁ、なんて。

酷くて優しい。















私はどんどん、昨日の空のような暗闇に、心を飲み込まれていくのでした。