仕事で帰りが遅くなった。
電車が無いから迎えに来てもらう、と誰かが言う。
ありがたいことに私にはまだ電車がある。
ふと、私にはもう迎えに来てくれる家族はいないのだな、と思う。
母は免許がなく、お迎えには来れない。
父はもういない。
弟も結婚していてお迎えに来てもらうわけにもいかない。
最寄駅に着いて、何気なく周りを見渡す。
もちろんお迎えなどいない。
昔は祖母や父が何故か改札を出るといて、迎えに来たよ、と笑っていた。
いわゆるサプライズお迎えだ。
当時は携帯電話も無い時代。
もちろん、今から帰るよ、なんて連絡することもない。
一体どれくらい待っていたのか。
会えずに帰ってしまった日もあったのかもしれない。
未婚の私はずっと同じ駅を利用している。
改札を出るたび、無意識にいるはずのないその姿を探している。