この先すずの妄想です。
翔ちゃんとかずくんはラブラブ。大丈夫な方はどうぞお進みください。
💛n
「あっれ…ビール無ぇじゃん。」
開けたかと思えば、
…パタリ。
翔ちゃんは冷蔵庫の扉をすぐに閉める。
よく見たの?
なんてのは愚問。
だって、その中はガラガラで、何が入ってるかなんて一目瞭然なのだから。
すると、
「ちょっとコンビニ行ってくるわ。」
思いもかけない言葉に、おれは驚いて手元のスマホからすくっと頭を上げる。
出掛ける?
うそでしょ?
風呂も済ませて、ようやくのんびりって時に?
「やめときなよ。酒なら他にも…」
フワモコな部屋着の袖を指先で手のひらへと手繰り寄せ、おれはそれを阻止すべく、
ころん…
これみよがしに暖かな床に転がってみせた。
今夜久しぶりにふたりの時間が持てたのに、ビールなんかのために出かけないでよ。
それよりさ。
風呂上りのほかほかのおれはどう?
今夜は翔ちゃんお気に入りのベビーパウダーの香りだよ?
「しょっおっちゃ…」
甘えた滑舌に上目遣い。
ころりん…
も一度寝返りを打って気を惹くつもりが、
「すぐ戻るから〜。」
長い脚は、頭の上をいとも簡単にスルーした。
白ティーの背中。
右手が掴んでるのは部屋着のよれたパーカー一枚で、
「え…そんだけじゃ寒いって。」
慌てて頭を起こした時には、もう翔ちゃんは小銭入れをスエットのポケットに滑り落として、玄関へと続く扉を開けていた。
「しょおちゃん。」
呼びかけも虚しくパタリと閉ざされた扉。
ひとすじの冷気がおれをくるりと撫でて、部屋はしんと静まり返る。
「もぅ、なんで?」
床を肘で押して起き上がれば、おなか回りに溜まるフワモコ。
あなた、この手触り大好きじゃなかった?
ふにっ…
自分で掴んでみては、へなりと肩を落とした。
10分とかからずに戻るだろう恋人。
だけどその僅かな時間さえ奪われたのが悲しかった。
それにしてもだよ。
翔ちゃんのティーシャツからのぞいた白い腕が目に浮かぶ。
師走の夜に、あんな薄着で出ていっちゃってさ。
風邪でもひいたらどうすんのよ。
そんな心配を巡らせれば、今年はまだ翔ちゃんの真冬用のダウンを見ていないなと気づいた。
去年のクリスマス、きつく抱きしめあって潰したあのダウン。
思い出せば、拗ねた気持ちは何処へやら、胸の真ん中が甘く擽られる。
「しょーがないなぁ。」
俺のことなら、寒かろう暑かろうと過保護なほど世話をやくくせに、自分のこととなると無頓着な恋人がかわいく思えて、
「出しといてあげますか。」
おれは、うんしょっと立ち上がり、ダウンの在り処、すなわち翔ちゃんのクローゼットをめざすのだった。
à suivre