車内アナウンスで、はっと我に返った。
セカンドバックを小脇に抱え、徐に出口へ。
「すみません!」
通路を隔てた席の女性が声をかけてきた。
「ひょっとして、紗那じゃない。」
もう列車は駅のホームへ入りだした。
「ええ、そうです。・・・ごめんなさい。ここで降ります。」
出口へと急いだ。
駅に降り立ち、足早に3番出口へ向かった。
この出口を出れば、約束のホテル。
13年前の約束を交わしたホテル。
ホテルの地下に続く通路は、人通りが少なく、私の顔相の変化をゆっくり噛みしめ楽しめるひと時だった。
このエレベーターで上がれば・・・。
エレベーターに足をかけようとした時、
「紗那!」
振り向くと、先ほどの女性が笑顔で向かってきた。
「覚えていないの、私の事。」
そう言って下していた長い髪をUPにした。
「あー、あー、あー、淳子?」
「そうよ、淳子よ!」
中学時代の同級生の淳子だった。
約束の時間まで、10分もなく焦った。
「ごめんね、ちょっと人に会うの。時間がなくて。」
「ええ、私もそうなの。主人と待ち合わせなの。お昼を一緒にする約束で。」
電話番号をお互い伝えあった。
淳子はご主人との待ち合わせの場所へエレベーターで向かった。
胸を撫で下ろした。
また、表情の変わっていく自分を感じながら、一人の時間を楽しんだ。