「でもね、最近またこの国を襲おうとしてるらしいの。」


「え・・・・・?」


何故。何故この国を襲うのだろう。襲って何の利益があるのだろう。


そして、何故母にはわかるのだろう。


「何で・・・・?ってか、どうしてお母さんが知ってるの・・・・?」


恐怖で声が震えた。


「・・・知和はまだ幼かったものね。」


母は少し間を空けると、また喋りだした。


「3人の術師が追放したとき、瑛魅鳥は言ったの。『この国には大いなる力が巡っている。必ずまた侵略しに来る』と。」


「大いなる力・・・?」


「パワースポットみたいのが、この国に集まっている。この国自体がパワースポット、ってとこかしら?」


「・・・つまり、その力を利用して何かしようとしているって訳ね。」


「瑛魅鳥はそれを、次の紅い満月が満ちたときと言った。」


紅い満月。


それはこの国にランダムに昇る月。


周期や確率は定かでは無いが、必ず満月の時にやって来る。


どの周期かの満月が、黄色ではなく真っ赤に染まる。


「知和が生まれてから、此処十数年。紅い満月は昇っていないわ。」


「・・・あたしも一回も見たこと無い・・・。」


「大体紅い満月の周期は、3年~6年。こんなにも空くなんて、気味が悪いわ。」


「瑛魅鳥はその満月を狙っているのね。」


「・・・・もしかしたら、今度の紅い満月は・・・・特別なのかもしれない。」


ゾクゾクッと、悪寒が背中を走った。


この国が瑛魅鳥の物になったら。


もし次回の紅い満月が、莫大な力を持っていたら。


知和の脳裏に浮かんだ言葉。


-そしたらこのセカイは・・・・あたしは・・・・どうなる?


怖くなった。でも、1つの考えをひらめいた。


「あたしが・・・・瑛魅鳥を倒す・・・・・。」


ぽつりと口にした言葉。


「駄目、駄目よ知和。貴方にそんなこと任せられない。」


それが母に聞こえたらしく、母は鋭い目で知和を睨んだ。


「でも・・・・誰かがやらなきゃ・・・・。」


この国は滅んでしまう。


知和にとって、それが途轍もなく嫌だった。


「でもそれが知和じゃなくたって良いでしょ?」


「お母さん!・・・・誰かがやってくれるなら、もう誰かがやってる筈だよ?」


「知和!」


「どうしても行きたいの!お父さんの敵がとりたいの・・・・この国を守りたいの!!!!」


しん・・・・と空気が静まり返る。


知和にとっても、母にとっても重い沈黙。


しかし、先に口を開いたのは母だった。


「わかったわ・・・・・。必ず無事に帰ってきてね・・・・・?」


「・・・・勿論!!」


知和は夢中で階段を駆け上がると、父の剣を掴んだ。


「お父さん・・・・期待しててよね・・・・!!」


その時流れ星が、夜空を滑り落ちた。


-知和編あらすじEND


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次回からヒーロー・爽空編あらすじです^^

「お母さん!!!」


慌てて自分の部屋を飛び出してきた知和を見て、母は目を丸くした。


「どうしたのよ、知和。」


洗い物をしていた母は、手早く手を拭くと、知和の元へ駆け寄った。


「ねぇ、お母さん。お父さんは、病気で死んだんだじゃないの・・・・!?」


母の動きが一瞬だけ止まった。


「・・・何言ってるの、知和。貴方だって、お父さんの死に目に立ち会ったじゃないの。」


確かに知和は、父の死に目をこの目で見た。そして、お葬式もちゃんと見届けた。


更に言えば、剣の文字に一言も『父の死』については触れていない。


「じゃっ・・・・じゃぁ・・・・お父さんの仕事は・・・・・何なの・・・・?」


「農家でしょ?」


母は意地でも父の本職を言わない気だ。はたまた、何も知らないのか?


知和は、それでも母に問う。


「でも・・・お父さんの剣には・・・・お父さんが王家の家来みたいなことが書いてあるよ?」


「え・・・・・?」


これは母も知らなかったようだ。純粋に驚いている。


「『我が信頼なる兵士に捧げる』って・・・・・・それともお父さんが盗ん・・・・。」


「知和!お父さんがそんなことするわけないでしょう!!!!」


母は一喝すると、溜息をついた。


「・・・・知和に話さなきゃね・・・・・・。」


母は父についてゆっくりと話し始めた。


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知和も母もリビングの椅子に、向かい合って座った。


「お父さんは王家に仕える人だったわ。そうね・・・・兵士って言えばわかるかしら?」


「うん・・・・。」


「現帝王に忠実に仕えていたわ。そして帝王からも、右腕として慕われてた。」


母は切なそうに目を細めた。


「そして知和が生まれた年。この国は、1人の術師に襲われた。その名は瑛魅鳥。」


「え・・・みう・・・・?」


「そう。強い術師だったの。勿論争いになって、何千もの兵士が呪われた。お父さんもその1人よ。」


「じゃぁお父さんの病気って・・・・・。」


「瑛魅鳥のせいよ。帝王はお父さんを哀れみ、あの剣を作ってくれたの。」


「そうだったんだ・・・・・・じゃぁ瑛魅鳥は!?」


「この国に強い術師が3人いたの。セレス・ダイアナ・ジュノー。彼等はオリュンポス十二神の3人だったの。」


「じゃぁ神様だ!」


「そうね。彼等が瑛魅鳥を、この国から永久追放したわ。」


「そっか・・・・・。」


少しだけ安堵した顔の知和。しかし次の母の言葉に、しばらく息が出来なかった。


「でもね、最近またこの国を襲おうとしてるらしいの。」


-第3話へ


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付け足し。


セレス・ダイアナ・ジュノーは、ローマ神話の神。詳しくは、Wikipediaにて。


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なんかぐだぐだでゴメヌ。

のどかな村の、一面に広がった花畑。


赤・桃色・黄色・黄緑が、鮮やかに混ざり合って出来ている。


その花畑に見える濃い金髪の少女。


年はまだ13~15ぐらいで、長い髪を2つに結っている。先はくるりと巻いてあった。


両手には桃色の花を抱えている。


彼女の名は、知和(ちわ)。この村外れに母と2人きりで住む少女だ。


彼女の日課は、この花畑で花を摘み、幼い頃に亡くなった父の墓に持っていくことである。


「早く帰らないと、お母さん心配するかな~?・・・えへへ!」


少女は両手に桃色の花を抱えたまま、花畑を駆けていった。


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「ただいま!」


父の墓にも花をあげてきて、上機嫌で帰宅した知和。


「お帰り、知和。」


それを和やかに出迎えた母。


母は今まで、女手一つで知和を育ててくれた。


知和の唯一の肉親だ。


知和は母に今日の昼食を聞くと、真っ直ぐに自分の部屋へ戻った。


そして、ごそごそとベットの下を漁る。


そこから出てきたのは、薄い茶色の紙に包まれ、藁紐で結ばれた何か。


知和は鼻歌混じりで、その包みを開けた。


「しばらく拭いてなかったな・・・・・。」


包みを開けると、一本の剣がそこにはあった。


刃は銀色に光り輝き、柄の部分は青・赤・緑の硝子玉で彩られている。


柄は金色の光を帯びて、龍の姿が彫られている立派なものだ。


「御免ね・・・お父さん・・・・。」


その剣は知和の父の物であり、彼女にとっては宝である。


知和は白い布を手にすると、丁寧に拭き始めた。


硝子玉は卵を扱うように優しく拭き、彫られた龍をなぞるように拭いて行く。


全て父に習ったやり方だ。


そんな知和は刃に彫られた文字に気付く。


此処何年か刃を拭いてきたが、どうやら気付かなかったようだ。


よく擦って、その文字を読みとる。


「我が・・・・信頼なる・・・・んーと??・・・・兵士かな・・・に授ける・・・・・何コレ。」


滑らかなアルファベットで彫られた謎の文字。


『我が信頼なる兵士に捧げる』


「第81代帝王・・・・?」


更に、現帝王の名前まで彫られている。


「え?これ、今の帝王から送られたもの・・・・・?」


何故それを父が・・・・・?


まさか田舎で住む平民の父が、帝王と知り合いだったワケがない。


父が盗んだもの?


信じたくない言葉が、ぐるぐると頭を巡った。


知和は台所にいる母の元へ駆けだしていた。


-第2話へ