昨日、久しぶりに三男に会った。
「近くで祭りがあるから遊びにおいで」
と誘っていたのだが、三男だけがヒマだったようだ。
久々に見て驚いてのは身長が伸びていたこと。
もうすぐ、俺の背丈を追い抜きそうだった。
最後に会った時は、三人の息子の中でまだ一番小さかった。
それが、今では一番大きくなっているとのこと。
それまでは二男が一番デカかったのだが、
その次男も今は成長が停滞している様だ。
「兄ちゃんはもうデカくならないんじゃね?」
そう言った三男の言葉は、もう諦めているようだった。
ここで言うところの“兄ちゃん”は長男を意味している。
「最近では家の中でもタバコを吸ってるしね」
と近況も添えて話してくれた。
俺自身、高校生の頃から喫煙していたから、
長男が煙草を吸っていることを責める気はない。
自分で稼いだ金で、自己の責任で吸え、というだけだ。
そして、最近引っ越した家に案内してやると、
「………」
三男は無言のまま、おもむろにテーブルの上を片付け始めた。
その行動が意味することはすぐに分かった。
三男はテーブルの上に右腕を立てる。
「腕相撲で勝負しろ」
と、笑みを浮かべながら俺を挑発してきた。
というのも、今までは一番デカかった二男と腕相撲をしてきた。
-そろそろ俺を負かしてくれるんじゃないか?-
しかし、二男は今まで俺のそんな期待に応えてくれたことはなかった。
「お?俺に勝てると思ってるのか?」
自身タップリに答えて、三男の右手を握る。
「!」
明らかに、二男とは違った感触を右手が捉える。
「GO!」
苦戦した挙句、俺はついに三男に負かされることになった。
悔しいからもう一度挑戦したが、やはり勝つことができなかった。
負かされることを望んでいたはずなのに、やはり負けっぱなしは悔しい。
今度は俺の方から左腕をテーブルに立てて三男に挑戦する。
「………」
「!!!!!」
何のことはない。利き腕ではない方の左腕では圧勝だった。
「もう一度!」
三男に言われて挑戦を受けるが、やはり左手では俺の方が強かった。
左腕で俺に負けた事より、右手で勝てた事の方が嬉しかったようで、
「ふっふっふっ!」
三男はその喜びを満面に浮かべていた。
その笑顔を見ながら、俺は三男に伝えた。
「負け惜しみって訳じゃないけどな…」
子供が親を超えていくことは、親にとっては大きな喜びだ、という事を…。
「じゃあ、俺は一つ親孝行できたかな?」
「ああ。十分に親孝行してもらった」
そう答えてやると、三男は照れ臭そうに鼻の頭を掻きながら微笑した。
それから祭りに繰り出して、縁日の露店を冷やかして歩く。
風は強かったが、天気も良く、日差しが強くて暑いくらいだ。
ビールでも飲みたい気分だったが、1杯500円は高すぎる。
腹にたまるものをいくつか買い食いし、暑さ凌ぎに家に戻る。
「なあ、もう一度やってみようぜ」
今度は俺の方からテーブルの上に右腕を立てて三男を挑発する。
さっき勝っているだけに、三男は断ることができない。
「どうせ勝てないんだからさ…」
そう言いながら、三男は俺の挑戦を受けた。
ところが、あら不思議♪
そうとう苦戦を強いられたが、今度は俺の方が勝ってしまった♪
「もう一度!」
三男は悔しそうに右腕をテーブルの上に立ててくる。
終わったばかりで筋肉が疲労している右腕はまだ震えている。
しかし、勝ってしまった以上、子供の挑戦は退けられない。
なんとなんと、二度目も俺が勝ってしまった。
流石に右腕が痛くなったのか、三男は今度は左腕を立ててくる。
「さっき負かされたのに懲りない奴だね?」
嘲笑うように言いながら、俺は三男の挑戦を受けたが…。
何故か、今度は左腕で負かされてしまった…。
「?????」
自分でも信じられない出来事に、頭の上に?マークが並んでくる。
左腕でも2戦してみたが結果は同じだった。
結局、右腕も左腕も2勝2敗で五分の引き分けで終わった。
無理に勝敗を付けようとしてこない辺り、
身体だけでなく、精神的にも三男は大人になっていたようだ。
ただ、スマホに講じている姿はやはり子供にしか見えなかったが…。
そんなこんなで、久しぶりに楽しい一日を過ごせた。
追伸:
今度は1勝すらできないで終わるような気がする…。