https://youtu.be/-c1q0iJJMcw
 Kathyが始めて夜の世界に出会ったのは18歳の時だ。
当時、福岡は大きな地震に見舞われたばかり。

 Kathyは次男のニノと一緒に福岡の地で新しい人生のスタートを切った。

 Kathyは音楽の専門学校でPAの勉強。
ニノはホテル業界の専門学校を卒業し、博多リバレイン内の料亭で就職が決まっていた。

家賃、光熱費等は兄のニノが負担してくれた。

 Kathyは当面の食費と携帯代の支払いを稼ぐ為にアルバイトを探した。

正午に面接の約束をこぎつけた Kathyは、地下鉄を乗り継ぎ 目的地へと向かう。

中洲にある珈琲の青山。地下鉄を降りた時には時計の針がまもなく正午を知らせるところだった。

 Kathyは慌ててお店へ電話をかける。

「すみません。少しおくれそうです。」

男店主「わかりました、気をつけていらしてください。」

 Kathyは昼の閑散としたその街を全力で走った。

額に少しの汗がにじむ。息を切らして到着した Kathyを男店主が微笑みを浮かべ大きな硝子の戸を開けながら出迎えてくれた。

 Kathy「遅れてすみません。」
男店主「はやかったね〜。」と驚き顔で微笑みを浮かべる。
 Kathyは無事にこの喫茶店で働かせてもらえることとなった。

勤務時間は深夜22時〜早朝5時まで。時期1250円程。

 Kathyは学校で吹奏楽部かゴスペルに所属したかった。そして、働きながら礼儀作法が身につくと求人誌に載っていたので、こりゃ一石二鳥といわんばかりの好条件。 Kathyは面接に受かり喜んでいた。
夜、はじめてのバイトの日。その街は昼のそれとは違い多くの人々で溢れていた。

街の灯りと人々の賑わいで、夜の空は月たちの姿を確認することは出来ない。

何もかもが新鮮で、 不思議の国へ迷い込んだアリスの気分。

 Kathyはこの喫茶店で出会った人達の記憶が今でも鮮明に脳裏に浮かぶ。

 Kathyがお店の門番を任せられた頃、
艶やかな着物姿に身を包んだ、品のあるお客様を迎えた。 Kathyはそのあまりの美しさに息を飲んだ。

男店主「あれは、おかまさんだよ。あの女性らしさは君も見習うべきだね。」

 Kathyは頷く。切り上げた襟足は綺麗に整えられ、綺麗に化粧で整えられた顔。そしてとてもいい匂いがした。この時の Kathyはまだ化粧もしらないおぼこさの残る少女のままだった。

着なれないスーツもなんだか滑稽に見える。

 Kathyがウェイターからレジの担当を任された頃、ビシッとしたスーツを着た恰幅が良く 見るのもを一瞬で虜にするような男前の男性と出会った。なんとも言えぬ貫禄と優しさの漂う穏やかな佇まい。 Kathyはレジを打ちながら鼓動が速くなったのを覚えている。
男店主「彼はやくざさんだよ。そこらへんの酔っ払いのは比べ物にならないくらいまともな大人だ。

 Kathyはここでも頷くばかり。

そして遠くにいる酔っ払ってクダを巻くおっさんとその仲間達に目を配る。これはこれで憎めないもんだけどな。 Kathyはそう思ったが、彼らが帰った後のテーブルを見て愕然とする。

「げっ、テーブルがゲロまみれ。。。」

 Kathyはなくなくそのテーブルを綺麗に拭きあげた。
 Kathyがその後、厨房で珈琲の淹れ方を覚えだした頃、ある人をレジに迎えた。
小柄だがビシッとスーツを決めて、そこはかとなく色気が漂う美男子。 Kathyまたもや恋をした。

男店主「彼女はおなべさん。かっこいいよね?男かと思うよね〜。」したり顔の男店主を他所に
 Kathyは彼の後ろ姿を見送った。
あくる日、大抵の業務を覚え始めた Kathyはある男二人組をレジに迎えた。
この男達は、 Kathyが友人のあつこの誘いで働いた夜のお店で出会った男達である。
彼らは次々と言葉をかけてくるが、 Kathy業務中である。早々とお会計を済ませると、苦笑いを浮かべながら外へ送り出す。

男店主「彼等はチンピラだよ。絡まれなかったかい?」男店主の気遣いは嬉しかったが、 Kathyの心中は複雑だった。

え?!まぢ??私あの内の1人と付き合い始めたばかりなんですけどーーー?!

後々彼は忽然と姿を消し、連れの男から金銭の振り込み要求があったので、1度目は素直に支払ったが、kathy夜のお店は、このチンピラと同じ日に出会ったお相撲さんとのご飯の約束をすっぽかして2日も出勤せずクビになったのだ。2度目は泣く泣くお断りした。彼を助けたい気持ちもあったが、 Kathyお金そんなにもってないよー。
なるほど、夜の女を食い物にする詐欺師だったのかと納得。店主の言う通り本物のチンピラだった訳だ。
この男店主、奥さんがいて、店主の勤務時間が夜間ということもあり子供を作らない主義だと話していた。そして大のB'zファンである。彼は本当に楽しそうにB'zについて語る。本当に変わったけど優しさ溢れるおじさんだった。
 Kathyは思った。あの街は昔から世界の縮図でこの街では何もかもの存在が許されて、自由な街であったと。

そして、よく働きよく遊ぶ大人達で溢れていた。

ニュースを通してみる今のこの街は コロナウィルスの蔓延により かつてとは打って変わった姿に。

経済も戦後なみの暴落加減。

 Kathyは昔を懐かしくも愛おしく思い返しながら
早くまたあの街にも遊びに行きたいなぁと思うばかりだ。