せっかく寄り道して本を買ったと言うのに・・・


10秒も置かずにメールが鳴るので亜季は少し戸惑いながらも

この絶え間ないメール攻撃をどうしようか困惑していた。



帰宅してから、例の30代の人にメールを返して

返信を待たずにお風呂に入り、ご飯を食べ、テレビを見てしばらくしてから

自室へ戻ってきた。


ピカピカと受信を知らせる携帯電話を片手に取り

買ったばかりの本を袋から取り出しワクワクしながらベットへゴロンと横になった。



「アキちゃんは高校生なんだね~今まで付き合った人はいるのかな?」


「まだ付き合ったりっていうのは無いんですよね^^; ララさんは?居るんですか?」


「自分は居たけどねーやっぱこの年だし 笑  色々してあげるよ★キモチ イ イ コ ト  笑」  


(!?)


30代の人、通称ララさんはかなり過激な方らしく

ちょっとまって!と言いたくなるようなメールを平気で送ってくるような人だった。

アキはそれまで付き合った事もなければ、もちろん関係を持った事なんて一度も無い。

友達との会話の中でも「キス」と言う単語でさえ顔が真っ赤になってしまうほどだ。

それほどまでにまだ純潔で何も知らないアキにとって、ララさんとの出会いは衝撃的だった。



付き合うとなると、それはもちろん・・・

手を繋いだり、身体が触れ合ったり・・・キスしたり・・・それから・・・それから・・・



「ごめんごめん(;´∀`) ジョウダンだよ~♪」



返信しようにも、何て言葉を返せばよいのか頭が真っ白だったアキは

5分ほど頭がショートしてしまっていたようで、流石の過激なララお姉さまもこれはマズイと思ったようで

すぐにフォローのメールをよこしたようだ。



「アキちゃんは甘い物好き?美味しいケーキ屋見つけたんだよね~今日!

 S駅裏の ブルーネってお店知ってる?」



それは駅から少し裏手に回った人通りの少ないカフェで

小さな看板がひとつポツンと窓辺に飾られているだけのお店らしく、

亜季も駅への近道として良く通る場所にあるらしかったが、全く気が付かなかった。



「そこのレアチーズがめっちゃくちゃ美味しくってさ~!

 また行きたいな~(´Д`)可愛い子と♪ 笑」



ララさんはメールの文面を見る限り、随分明るくて人をグイグイ引っ張るような印象で

ちょっと強引なようだけれど、これまで周りに居ないタイプで

亜季は次第にララのペースにハマっていった。

自分が引っ込み思案で恥ずかしがり屋なものだから、こうして物事をテキパキと決めて

『じゃあ行くぞ!付いて来い!』という彼女の男っぽいところも何だかミステリアスで気になった。



ララからメールを貰った後も、掲示板で気になる人がいると

ナツの後押しもあって亜季は積極的にメールをしてみたのだが

メールを送った相手も、メールをくれる相手も

なかなか相性が合わずに、大概4日目でメールは途絶えた。

しかし不思議な雰囲気を持つララとのメールは数日続き

気付けば日課のように毎晩寝る前にメールをするようになっていた。




ナツやララとの秘密の友情関係が続く中

日常生活ではいよいよ学園祭の時期が近づいてきていた。


ナツもこの時期はその準備に追われ、同じように亜季も大忙しだった。

各クラスの催し物は、「風船の部屋」や「クイズ大会」「プレゼント探し」などなど

亜季のクラスは恒例の「オバケ屋敷」となった。

お陰で昼休みも放課後もその準備に追われ、

特に取り掛かりの遅かった亜季のクラスはすっかり日が落ちるまでの作業が続いた。


家に帰るとすぐにご飯を食べて、お風呂へ入ってベットへ直行・・・

メールをする体力もないほど消耗し切った身体はあっという間に夢の中へ吸い込まれてゆく。



そんな日々が数日続いたある日、珍しく亜季は早めに帰宅する事が出来た。

ナツとは、出し物の相談や雑談などでメールをする事も多かったのだが

ララとのメールの回数はすっかり減ってしまっていた。

申し訳ないと思いつつ、帰りのバスに揺られながら数日振りにやっとメールを送ることが出来た。



「こんばんわ♪最近メル出来なくってごめんなさい(;´Д`)文化祭もうすぐなんだー」



いつものようにご飯を食べてお風呂へ入って、ベットへ横になる時間になっても

ララからの返信は無かった。


あんなに仲良く慣れたのに・・・やっぱり怒っているのかな~


「怒ってる?ごめんなさい。ケーキ一緒に食べたかったな~」



何気に打った一言だったが、これが自分からのデートのお誘いになっているなんて

亜季は気付くこともなく、そのまま返信を待たずに睡魔に誘われ夢の中へ吸い込まれた。




******


その日、亜季は夢をみた――


笑い合っているこの人は、背が高くてすご愛おしい人・・・

不意に、優しく抱きしめられる


心地よい・・・温かくて、このまま溶ろけてしまいそうなほど――


唇が重なるほどの距離まで近づいてくる・・・

彼女は笑って、亜季のほっぺに唇を当てたまま 何かを囁いた



******



何かぼにんやりとした音が聞こえてくる・・・

目覚ましの音が遠くで聞こえると、気付いたと同時に

今見た夢がものすごくリアルで、切なくて

夢の中の彼女に恋しているような感覚になった。


名前どころか、顔すらよく分らなかったのに・・・

思い出すと胸が少し苦しい・・・恋しい?




メールが受信されているのにも気付かず

気持ちを落ち着けるようにバタバタと準備を済ませて

いつもより少し早く家を出た。


一人になって、もう一度あの夢の中の彼女を思い出したかったのだ。















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はーい、虹花です。

ようやく!ようやく出てきましたー!

何かを起こしてくれそうなキャラが!!


脳内小説なので誰が出るやら自分でも楽しみです♪

ホントはちゃんと構成考えてノートにまとめたいけど

誰かに見つかっちゃったらリアルでピンチですのねで 笑



今日も読んでくださりありがとうございました~★



ナツとの関係が親友スイッチへ切り替わってから、気持ちがだいぶラクになって

今まで肩肘はっていたのが嘘のように何でも言い合える間柄になった。

これは、もしかしたら恋人よりもずっと大事な存在になってくれたのかもしれないなぁ・・・



月曜日、午後の授業を受けながら亜季はやはり先生の話も上の空で考えを巡らせていた。

昨日メールが来た30代の人へはまだ返信もしていなかったので

そちらの方も気にはなっていたのだ。



(30歳って・・・オバさ・・・)



そう思ってふと見上げると、黒板に一生懸命板書している国語の先生通称マリちゃん。

彼女は34歳だと言っていたが、付き合える可能性は充分にあるほど可愛くてお茶目な先生だった。

実際、年齢で見るより人で変わる物なのかも・・・


ナツという頼もしい相談相手が出来た亜季にとって、心の余裕というのは大きな安定剤だ。

今すぐにナツに相談するのは気が引けるが、もうしばらくしたら話してみよう。



亜季はその日の放課後、ようやくメールの返信を決意した。




部活に所属していない亜季は、真っ直ぐ家に帰るつもりだったけれど

愛読書、コバルト文庫の『マリーア様もみてる。』 が昨日発売されたので

本屋へ寄ってから帰る事にした。

さっちゃんと、ゆーちゃんの今後が気になって仕方がない。思い出すと居てもたってもいられなくなるものだ。


いつも買う本屋さんは既に完売。

ココまで来て諦めるわけにはいかず、少し離れている古い書店へ向かう。


「・・・いらっしゃいませ。」


昔から存在は知っていたけれど、入ったことは一度も無かった。

薄暗い店内には、おじさんとバイトらしき人の2人以外お客さんは居なかった。


―独特の、古本屋さんの匂い


何だか嫌いじゃない雰囲気だ。

おじさんもメガネを掛けて本とにらめっこしている。

バイトの人は、今丁度本が入荷したからか、重そうなダンボールから店頭へ並べている様子だった。


お目当ての本はやっぱりあった!!

それでも最後の一冊だったのはラッキーだった。

ホッと胸を撫で下ろし、レジへ向かう途中で300円コーナーと書かれたワゴンが目に留まり

何か面白そうな本は無いかと立ち止まる。



しばらく、パラパラと眺めていたけれど結局読みそうな本も無かったので

改めてレジへ向かうと、さっきまでそこに居たはずのおじさんの姿が無かった。


「あれ??」


キョロキョロ見渡すが、やはり居ない。

店内をちょこっと歩いてみたけど居るのはバイトの人だけだった。


仕方なく、忙しそうにしているが声を掛ける



「すみません・・・あの・・・これ下さ・・・い」



しゃがんでいたバイトの人がスクっと立ち上がる。

髪は茶髪で、背がスラリと高い。

一件男の人に見えそうだけど、女性だ・・・たぶん。



「あー、店長・・・ はいはい。ごめんね~」



声を聞くとやっぱり女の人だと分かった。

顔もきれいに整っていて、化粧っ気があまりないのにすごく美人だ。

亜季よりも5つは年上だろうか

テキパキと仕事をこなし、とても愛想の良い人だった。



「はい、じゃー 50円のお釣りです。」


「あ、ありがとうございます。」



狭い店内に年上の美人と2人っきりで何だかものすごく照れてしまって

今までに感じたことの無い様な緊張感を感じて、一刻も早く店を出ようと出口に足を進めた。



「売れるんだよねー その本。」


「へっ?!」



ちょっと照れ臭そうにお姉さんに突然声を掛けられ

間抜けな声になってしまったのが恥ずかしかったが、



「そ~れ。人気なんだねー面白いの?」



すぐさま話題を振られ、まだまだ戸惑った。

だって、ちょっとだけこの本はGL要素があるものでして・・・



「あ、はい。面白いで・・・す



ガラガラッ!!!



ドギマギしている亜季の背後から突然音がして振り返ると

さっきまでここに居たおじさんが、何処かから帰って来たところだった。

書店のロゴ入りの紙袋にチラリと目をやると


「ありがとーございました」


と、一言軽い会釈をされたので


「どうも」


と小さく答えて亜季は書店を後にした。

外へ出るともう随分と辺りが薄暗くなり始めていた。


意外と長居してしまったみたい・・・


亜季は本をカバンに入れ、少し早歩きで駅まで歩いた。





電車に揺られながら、さっきのお姉さんを思い返すと

何だか顔がニヤニヤしてしまって仕方が無かった。

学校でだって、あんな美人な人は居ないし、

クラスで一番可愛いって言われている佐藤さんからだって

あんまり話しかけられるようなタイプじゃないし。



あんな美人が、どうしてあんな古い書店で働いているんだろう・・・

今度からはこっちで買おうかな~



カバンをギュウと握り締めながら

亜季はちょっと頬が赤くなるのを感じてうつむいた。









******

こんばんは、虹花です。

いや~進みませんね~お話。


もっとサクサク進めたいのだけれど

と思いつつ、書いている事には全然進展がない 笑


こりゃ~も一回マリみて読まなきゃな~ (*´ω`*)

本日も来て下さったかた、ありがとうございました★


PS.アメーバブログの「ペタ」ってなに~??

******

ナツと分かれた後、電車に乗り込んだ亜季は

心の整理が付かずに少し混乱していた。



ボーっとしながらもう薄暗い夜の町並みを眺めながら電車はガタンゴトンと

いつものように揺れていた。

亜季の中で起こった非日常のような世界は

亜季以外の人の中では関係のない日常なのだと気付く。



ポケットに仕舞った携帯電話で時刻を確認しようと手に取ると

チカチカと点滅していた。


グリーンはメールのサインだ。



カラオケで歌っている間、コートは置きっぱなしだったので気が付かなかった

日常に戻ってしまった亜季にとって、クラスメイトからのメールは

さほど心躍るような嬉しい出来事でもなくなり、淡々とフォルダを開いてチェックする



「こんにちは★カキコみました。オバサンになっちゃうかもしれないけど、ご飯でもいかがですか~?

私は今年30歳のタチです♪ご飯おごるよ(・∀・)b」



最初、文面が理解できずに2度読み返す・・・

そうか!!ナツと出会ってすっかり忘れていたけれど、掲示板へは書き込みされたままだ。

他の人からメールが来るなんて思っても見なかったものだから

亜季はハッと息を呑んだ。

これは・・・どうしたら良いのだろう。

ナツとの関係がどうなるかも分らないまま、新たに人と会って良いものか・・・



この30歳の名無しさんには申し訳ないが、しばらくメールは保留にしておくことにした。




日曜の朝


昨日ナツと会ってからお互いメールはしなかった。

今日は祖母の家に行くというからわざわざ土曜に予定を変更したのに

母の勘違いで予定は一週間先延ばしとなってしまった。


こんなことなら、今日もナツと会う約束をしておけばよかった


朝食を食べながら亜季はナツのことを考えていた。

これは恋愛感情なのだろうか・・・それとも、ただ気持ちを理解してくれる人に出会えた喜び?

昨日は始終ドキドキの連続だったけど、それがどういう感情なのか理解できなかった。

手を握った時の感情はなんだろう?

柔らかな髪が漂うあの甘い匂いに感じた気持ちはなんだったのか


深く追求したくなったが、母から話しかけられてまた現実の世界へと引き戻された気分になった。



自室へ戻り、ベットの上に寝転がる。

ナツはメールしてくるだろうか?

やはり私からメールしてみようか、でも何て?


携帯を取り出し、ナツ宛のメールを考える。

どういう感情か、なんて分らない。でも、ナツはもう亜季にとってかけがえのない存在になったのは確かだった。



「昨日は、楽しかったね。また行こうね、カラオケ(*´∀`*)」



短すぎる文面だったけど、他に伝える言葉がみつからなかった。

ふぅとため息をついて携帯を閉じると同時に受信音が鳴り響く

まるで今、同時にメールを打ったような感じだった。



「アキごめん。私、やっぱり・・・女性を恋愛対象としては見れない。ごめんね」



ああ・・・

何だか最後のナツの切ない表情の理由が分った気がした。

だから、あんなに悲しい分かれ方になってしまったんだ。

あの時はまだ、ナツは悩んでいたのだろう。もしかしたら、このまま進めば

お互いが一歩ずつ歩み寄れば、行き付く所に辿り着けるかもしれない。

でも、ナツはそう出来ないとあの時すでに理解していたのかもしれない。

短い文からナツの申し訳なさが伝わってくるようで、本当は悲しいはずなのに

亜季はなぜだか嬉しくも思えた。



「そんな、謝る事じゃないよ~♪会ってくれてありがとう。ナツは私の始めての理解者だよ」



少し気丈になってしまったけれど、伝えたい事はこれで充分に思えた。

私のせいでナツに色々悩んで欲しくなかった。

私が中学の頃から悶々と悩み続けた長いトンネルをわざわざ味わう必要はないのだ。


恋人としての立場はなくなってしまったが、こうして理解してくれる人が

実際に居てくれる事がこんなにもありがたいことだとは・・・

亜季はナツと出会えた事に感謝した。

そして、これからも友達として支えていて欲しいと、メールの末文に付け加えて送信した。

ナツからの返事は、もちろんだよ、と 絵文字たっぷりの返信だった。

それからお昼過ぎまでナツとはメールをやり取りして、

以前よりずっとお互いの距離は縮まったと確信できた。


初めて同性愛者だと打ち明けて出会った人が、親友になるなんて

こんな奇跡はもう二度と起きないだろうなと思うと

亜季は心の底から身体が軽くなっていくのを感じた。

もう一人じゃないんだ・・・








***************


こんばんは。虹花です


だめだぁー!!( ;∀;)眠さを堪えて書きました 笑

こんなに急展開を繰り返していて良いのでしょうか・・・


最初からナツとは恋人同士になる展開ではなかったのですが

書いていくうちにナツが良い人に思えてなかなか

分かれさせる口実が浮かびませんでした。


今後は親友として亜季を支えてくれることでしょう。

さて、次回はまた新たな出会いを書きます。



そして、書き方が

「亜季」と言ったり「私」と書いたりもうバラバラですね

もっと勉強しなきゃだめだわー


きちんと描写出来ているのかしら・・・

感想など率直なご意見を、オブラートに包んでからコメ頂けると嬉しいです 笑


それではまた次回~♪

「まった?ごめんね~電車ちょっと遅れたみたい」

ふわりと髪がなびいて、柔らかい風と共に私の鼻をくすぐっていく



(・・・いい匂い)



待ち合わせをした場所から、ドコにいる?とかどんな服装?とか

待ち合わせをしている相手を探し出すのに少し苦労した。

自分から話しかけるのはドキドキするな・・・と思っていたら

ナツはあっけなく、「まった?」とまるで昔からの知り合いのように話しかけてきてくれた。



「ん?・・・アキ・・・さん ですよね??」

黙り込んでしまった亜季から一瞬離れてちょっと慌ててナツが問いかける。




「うん!そうそう。ごめんちょっと・・・緊張して・・・ます」


「あはは!! 何で敬語? って、私も ですよね? とか言っちゃったけど~」



ナツは打ち解け方が上手だ。

比べて私ときたら・・・服装だって何時間も悩んだのに結局幼い感じになってしまった

第一印象が大事だってずっと悩んでいたのが、逆に無難な服装を無意識に選び出してしまったのか。



「とりあえず、お茶でもイコッカ~♪」



目的はカラオケだったけど、このまま行くとせっかく会えたのに話す間もなくストレス発散の展開になりそうだし

お茶にするには大賛成の気分だ。

緊張をほぐすのにも丁度良かった。


道々、ナツは色々と話しかけてきてくれたけど

亜季は結局カフェに辿り着くまでに「そうなんだ」とか「へぇ~」という相槌をするのが精一杯で

ナツもしばらく黙って歩いていしまう場面が続いた。

亜季といえば、話をするよりも反省会の真っ只中でまるで周囲が見えていない様子



「それで? アキはいつからそういう感じなの?」



オーダーした後、メニューを定位置に戻しながらナツが言う

「そういう感じ」とは、周りの目も合ってあいまいな言い方をしたが

つまりいつから女性を意識し始めたのか?ということだ。



「へぇっつ?! そそそ・・・それは   な、ナツは?」



あまりに直球な質問に思わず投げられたボールを受け取らずに

持っているボールを投げ返した形になった。



「私は~ うーん そうねぇ 去年?」


「去年? そっかー 」


「アキは?」


「えと 中学くらいから・・・かな・・・たぶん・・・」


「へぇー!!じゃあ長いじゃん。」



と言うと、ナツが突然顔を近づけて 「彼女いたことある?」 と、小声で耳打ちされ

亜季は顔をブンブンと横に振りながら 「ないない!」 と両手のジェスチャーまで加えて返答した。

顔が赤いよ と笑われたけど、赤くなったのはナツのせいだ。

肩まで真っ直ぐに伸びたストレートヘアに、お化粧も特にアイメイクはバッチリ

オシャレな赤いピアスが時々髪の間からチラリと光り、やけに色っぽかった。

そんな女性に耳打ちされたんじゃこっちとしては心臓バクバクものだ。


ただ想像と違ったのは、私よりも少し背が小さくて団子っ鼻だったことかな

体系も少しだけぽっちゃり・・・と言っては言い過ぎか。

それにしたって、女性フェロモンがムンムン おまけに風も冷たいというのに膝上のミニスカート。

ますます反省会が始まってしまいそうになる、リアルタイムに反省会をしてどうする。



お昼も近いということで、ここでご飯も食べることになり、

ナツはナポリタン アキはオムライスをそれぞれ注文した。



始めて、異性を見るような気持ちで同姓と向かい合って食事をするのは

なんとも、むずがゆい様な雰囲気な気がしたが、ナツは相変わらず大人っぽく

テキパキと話しては、クルクルと器用にスプーンを使って麺を絡め取っていく。

まるで同い年のような気がしないのはなぜだろう。

今まで自分がこんなに幼いと思ったことはなかったのに・・・

オムライスがデミグラスソースじゃなかった事にがっかりしながら

アキはスプーンでいつもより少し少なめにすくって食べた。

味も・・・少々ガッカリだったかも。



カフェでだいぶ打ち解けた気持ちになったのはアキだけではなかったようで

カラオケまでの道のり、二人は並んで歩く距離がさっきより近くて

時々ナツと肌が触れ合うこともあった。

その度にアキは心臓がドキドキと鼓動を早め、それを見透かすかのようにナツは笑っていた。



カラオケのお店の前まで、何とも思っていなかったが

部屋へ入ってハタと気がついた。



個室・・・だ   当たり前か・・・



そこはナツと二人っきりの空間

さっきのカフェでは周りのお客さんも居て、閉鎖空間でもなかった。

でもカラオケは、当たり前だが外界の音をシャットアウトする為に分厚い壁にドア

外からは容易には確認出来ないすりガラス。

さっきまでのドキドキとは比べ物にならない緊張が走った。



カラオケなのだから・・・歌えばいいのよ



一瞬ボケーっと突っ立っているアキを見て可笑しそうに見つめるナツが

コートを脱ぎながら 何にする? とメニューを顎でクイっと促がす。

またしてもナツに助け舟を出してもらった。

反省会は・・・後回し。とりあえず適当な飲み物を頼んでおこう。



「アタシ 歌はちょっとニガテなんだよねー実は」



注文の電話を終えたナツが照れくさそうに笑った

その発言に嘘はなく、ナツは本当に歌がニガテなようだった・・・

それでもアキは少しほっと出来る要素が嬉しかった。

何もかも上をいかれては釣り合うどころではない。

2時間のカラオケでお互い知らない曲も意外と多かったけれど

友達と行く時のような放置はせずに、きちんと耳を傾けて歌声を聴いていた。

2人で歌うとあっという間に自分の番になるものだから、最初はかなり戸惑ったけど

終了のコールが来る頃には、笑いあって一緒に歌っていた。

何だか信じられないほど、全てが上手くいっているように見えた。

このまま進んでいくと、自分たちは一体 どこへいくのだろう・・・

まだ出会って1ヶ月も経たない2人が、これからどうなるのかアキには想像も付かなかった。



「うぅ~~~~っ!! 寒いねぇ~っ!!」

「きゃ~! さっぶいさっぶい・・・」



外へ出るともうあたりは薄暗くて、暖房で温まった体は一層寒さを感じさせた。

ポケットに手を突っ込んで、猫背になるアキにぶつかる様にナツが腕を組んで歩き始める。

2人の足並みがそろって、時々ヨタヨタとなりながら駅まで歩いていく。

カラオケで高まったテンションは、この寒さを借りてもまだ冷めることは無いようだ。


駅の明かりが近づくと、ナツはそっとアキの手の入った方のポケットへ手を忍ばせた。

2人は誰にも分らないようにその中でギュッと手を結んだ。

顔に当たる風は寒くて、感覚が麻痺しそうだったけれど

繋いだ手と手はこんなにも温かかった。


帰りの道が別々の分かれ道で

アキは一度だけギュッとナツの手を握った

答えるようにナツの手がアキを握り返してきた。


まだたった1回会っただけなのに、こんなにも帰るのが惜しい。

もっと2人で居たい。もっとナツと一緒に居たい。

このまま時間が止まってしまえばいいのに・・・




ナツがそっとポケットから手を抜き取り耳元で囁いた




「また ・・・会えるよね?」



一生の別れでもないのに、泣きそうになるアキの顔を見つめながら

ナツはまた笑って手を取り、ギュっギュッと2度強く握って手を離した。



離れた手はあっという間に秋の風に洗われて冷たくなっていった。



「またメールするね」



ナツは後ろへ下がりながら手を振って言った。

反省会は家へ帰ってからなのに、アキはまた自分の反省点を見つけてしまった。



「私からメールするから!!」



少し大きな声じゃないと聞こえないくらいの距離になってから

ようやく搾り出した声はナツに届いたのか分らなかったけど

大きく手を振ってナツは背中を向けて歩いていった。



夕暮れの秋の風はますます風力を強め、離れた手はとっくに冷え切っていた。

あの感触を忘れないようにもう一度ポケットへ手を入れ

今度はアキがその場から離れた。

何度か振り返ったが、ナツの姿はもう分らなかった。




― 楽しかったという充実感より、この大きな穴の空いた様な感覚は何なのだろう。



秋は足早に駅のホームへ向かい

温かい電車の中へ吸い込まれていった。














―序 4へつづく―






*****


こんにちは虹花です。

いよいよ出会いから一歩前進した話へ進みました。


駆け足だったかもしれませんが、私自身早く亜季に恋愛してほしくてウズウズしています。 笑

感想など頂けると大変嬉しいです。何でもお気軽にコメ下さい。



実は、途中まで真夏の設定で書いておりまして

そういえば秋って冒頭で書かなかったっけ?と思い慌てて軌道修正しました。

秋にしてはちょっと寒さの表現が強すぎたかな??


次回もお楽しみに~♪


書き込みをしてから2日が過ぎたが、一向にメールは来なかった。

アドレスを間違えたのかと何度も確認したりもしたが、そのたびに自分の書き込みが

ドンドン過去へ追いやられ、新しい書き込みがあっという間に増えていった。


( こうして、誰にも気付かれずに過ぎるならそれもアリかな・・・ )



心の中にモヤモヤを抱えていると、授業もテストも実が入らない。

休み時間に友達と話をしても、いつも男子の事ばかりで

余計に頭と心を混乱させるばかりだった。



4限が終わり、お昼を食べた後

会話をするのも億劫なので本を読んでやり過ごした。


同じグループの川辺さんは、なぜか男子から人気があったが

亜季は全く好きになれなかった。


( アレだ・・・あの胸だよね・・・ )


そう、原因はあの強調し過ぎる胸の膨らみだ。

歩く時もなぜか胸を張って歩いているようにしか見えないし

それを男子がバカみたいな顔で見ているのも不快に感じてしまう。


( 嫉妬・・・かなぁ )


自分の胸を見ようにも、どこですかー?と聞かなければ分らないほど

亜季は自分の胸を残念そうに見つめた。

あんなに大きくなくても・・・せめてもう少し主張してほしかったんですけど・・・

川辺さんが数学のノートを返しに来てくれた時

亜季は笑顔でそう思うしかなかった。




掃除に5限が終了したところで、今日の授業は終わりだった。

夕暮れになると秋口でも結構風が冷たい。

これから短パンで部活を始める生徒諸君には悪いが、

足早に教室を抜け、靴箱を通って学校正面入り口のバス停まで

なるべく早足で駆け抜けた。


5分もしない内にバスが到着し、

まだ帰宅生徒の少ないバスに乗り込むことが出来た。

バスの中は少し温かくて、少し冷えた身体がホッとすると気持ちもだいぶ落ち着いた。

始めは座れない程だった車内も、家に近づくにつれて人影が少なくなっていく。

いつものメガネのおじさんが降りる頃には、空席も目立っていた。


二人掛けの椅子の窓際に座ると、ふと掲示板の書き込みを思い出した。


無いと分っていても、一応確認したくなるのが不思議よねぇ~


カバンから携帯を探し出し、人影の少ない車内で電源を入れると

すぐにメール受信の画面に切り替わった


来ないんでしょ・・・どうせ   またお母さんか・・・美雪でしょ・・・


「受信しました」の画面が現れるとすぐさまフォルダを開いて差出人をチェック・・・



― 知らない人だ!!


一昨日の緊張感がよみがえり、少し震える指でメールを開く




「コンニチハ(´Д`) 私も暇なんだー 一緒にカラオケでも行かない? ナツ」



― ナツ・・・ さん


メールは今日のお昼休み頃来ていたようだった。

返信文を考えようと画面を開くところで

そこは降りるバス停のひとつ前だった。

慌てて定期検をポケットから引っ張り出し、押しボタンを鳴らす。


何か 全ての日常が たった今から ナツさんを中心に周り始めていた。



その日から、素性も知らない「ナツさん」とのメールのやり取りが始まった。

勝手に膨らんだイメージと、現実世界の彼女の修正を繰り返した。

彼女の好きな音楽を聴いて、一緒に歌う約束の曲を何度もリピートした。

「ナツさん」から「ナツ」と呼び合うようになるまでに時間は掛からず

こんなに気の合う人っているんだ!と実感できる幸せに日々浸っていた。


ナツは、少し離れた高校の同い年だった。

陸上部に所属しているから帰宅はいつも7時前。

9時までに学校や家の用事を済ませて、部屋にこもって

眠るまでずっとメールをし続けた。

そんな日が1週間も続いたある日



「今度の日曜、カラオケ行こう♪」



と ナツからメールが来た。