「何で都合が付かないわけ?」
彩夏のイライラとしたトゲのある言葉が右耳に飛び込んでくる。
予想は出来たが 正直、彩夏のわがままっぷりに亜季はウンザリしていた・・・
左手に携帯を持ち替えて、大きく息を吐き・・・告げる
「ねぇ・・・もう 別れ ない?」
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高校2年の秋に、興味本位で書き込んだ インターネットの「出会い系掲示板」
だが、そこに集まる人は女性だけ。いわゆるレズビアンという人々だ。
最初に書き込む時は、決意していた事だけど指が震えた。
自分だってその一員かもしれないのに、同性愛者に対する偏見が目の前に突きつけられているようだった。
何度も深呼吸を繰り返して、ようやく頭の中から引っ張り出した言葉を打ち出していく・・・
『アキ 17歳 高2のアキです。毎日学校と家の往復でツマラナイ毎日・・・誰か一緒に遊んでくれませんか?』
たったコレだけの文章を打つのに、実に小一時間は掛かった。
自分から、掲示板へ書き込みしている人にメールをするのも手だったが
そんな勇気は持てなかった。
この書き込みをみて、誰かが連絡してくれるのを待つ方が手っ取り早いか・・・
意を決して書き込んだ文面は、送信後に見ると実に稚拙でちょっとおバカっぽかった。
深呼吸が、ため息に変わって 携帯を閉じるとそのままベットで横になり目を閉じた・・・
まだ見ぬ、憧れのあの人を想って ―――――
***
亜季が自覚し始めたのは中学の頃。
同じクラスになった麗に友情ではない特別な感情を抱いた時から
この不思議な感情とどう向き合えばよいのか分らないまま過ごして来た。
麗と笑い合ったり、手紙を交換し合ったり肌が触れ合ったりすると
心の奥底から何か温かい感情が沸き起こってくるのが分った。
遠くから麗の姿を追った。体育祭の時も、文化祭で麗が大勢に混ざって演奏している時だって・・・
亜季には一瞬で麗が何処にいるのか把握できるほど、麗の容姿を食い入るようにいつも遠くから気付かれないように追っていた。
目が合いそうになると自然と視界から外せるようにまでなった。
麗と向かい合って話すと胸がドキドキして、この想いを伝えてはどうかと何度も思った。
麗が隣のクラスと男子と付き合うという話をするまでは・・・。
高校に入学して、麗とは違う学校に通う日々が続くと
自然とお互いに連絡をしなくなっていった。
高校1年の冬に一度麗と遊ぶ約束をして出掛けたが、あの頃の麗の面影はどこか薄れ
会話はほとんど彼氏の自慢か今学校で流行っている物についてだった。
麗への、あの友情を越えた感情は一瞬で冷めていくのが分った。
あぁ・・・違う 君はもう、私の知っている麗じゃないんだ・・・
***
―!! ヴヴヴヴッヴヴヴッ・・・
突然耳元で振動する携帯に 心臓がドキッとして目を覚ました。
時計の針は2回クルクルと回ったようだ。
「そんなに寝てしまったんだ・・・ そうだ、メール?!」
掲示板への書き込みから2時間
恐る恐るメールを開いてみる。
どんな人だろう
可愛い感じの人がいいな
気の合わない人だったらどうしよう
何て返事をしたらいいの?!
落ち着かない心を沈ませるように、急いでフォルダを開く・・・!!
>> 帰りは遅くなります。 ご飯適当にね 母
携帯を折りたたみながら
安堵ともガッカリとも・・・何とも言えないため息を吐く
これで今日、何度目のため息だろう。
でも、なぜか安心しているのはどうしてだろう??
踏み出したい気持ちと、留まっていたい気持ちの境界線
一歩踏み出せば、後戻りは出来るのだろうか?
こちら側と向こう側・・・目には見えない境界線がハッキリとココにはあった。